この夏、政府の持続化給付金をめぐってさまざまなトラブルが起きた。そのひとつが「コールセンターに電話がつながらない」というものだ。一体どんな問い合わせがあり、どんな対応が行われていたのか。元オペレーターがその内幕を明かす――。(第3回)
PCモニタにかけられたヘッドセット
写真=iStock.com/LumiNola
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「走りながら柔軟に修正」というやり方はいいのだが…

「結局あれは、『国民の皆様からの御批判にお応えしました』っていうポーズ作りなんですよ」

私たちのスーパーバイザーを相手に、コールセンター運営会社の社員はこう断じました。

持続化給付金という事業は、申請規程から問い合わせ窓口であるコールセンター内のルールに至るまで、さまざまなことがとにかく目まぐるしく変わります。

申請規程では、6月29日からフリーランス事業者や、2020年の1月から3月までに創業した事業者も給付対象者に含まれるようになりました。受付開始時の対象者の想定が甘かったと批判する声もありましたが、コロナ禍に苦しむ事業者を救済するため、まずはできる限り迅速に制度を立ち上げ、走りながら都度都度で柔軟に修正を施していくやり方を選んだのだと思います。

それに伴って申請者などからの疑問や要望が反映されていったのか、給付金のホームページには当初の記載内容よりもかなりきめ細かい説明や解説、よく寄せられる質問の例などがどんどん追加されていきました。

となるとコールセンターのスタッフも制度やホームページの変更に合わせ、新しい知識を随時理解、記憶していかねばならず、これにはなかなか苦労しました。

センター内の変化はこれだけではありません。

「1日働いて2本しか電話を取らない」という人も珍しくない

5月の申請受付当初の超繁忙期には、渋谷の拠点だけで100人超もの入電者(相談者)がオペレーターにつながるのをずっと待っている時間帯があったそうです。

しかし7月中旬以降は入電数もかなり落ち着き、われわれのフロアにいる150人前後のオペレーターのうち、20~30人が応対中でも切電後の通話記録の作成中でもなく、ただただ手持無沙汰な状態にあることを、壁の電光掲示ボードが示す時間帯が出てきました。

さらに8月に入ると、日曜などは常に100名以上のオペレーターが電話が入るのをぼーっと待っているという人員の大量だぶつきが発生(1日働いて2本しか電話を取らなかった人も珍しくありませんでした)。そのせいか9月以降、渋谷をはじめ全国7拠点からなる持続化給付金コールセンターは、開設以来の無休稼働から、土曜・祝日が休みとなりました。

入電数の減少はオペレーター1人当たりが費やせる時間の増加につながり、応対に余裕が生まれます。

センター開設当初、申請後2週間未満の方からの審査の進捗状況の問い合わせの場合、個別の照会を極力避け、できる限り、「ただ今審査中ですので、もう少々お待ちください」という案内だけで終わらせるのが基本ルールでしたが、やがて、どんな方であってもまずは入電者の申請番号や名前、電話番号などをうかがって、データベースで個々の進捗具合を確認するようになりました。さらに、判明した状況について答えられる内容も、段階的に増えていったのです。