「国会レベルで応対品質が問題になっています」

こんなこともありました。

8月下旬、衆議院本館で開かれた『野党合同国対ヒアリング』で、中小企業庁が、

「持続化給付金コールセンターに審査状況の問い合わせを毎日していたある申請者が、対応したオペレーターから『毎日電話していただいても迷惑ですから、待ってください』と言い放たれた上に、オペレーターの側から一方的に切電されたとの報告を受けている。給付金事務局のコールセンター監督態勢はどうなっているのか」

と指摘されたのです。するとその10日後、コールセンターでの朝礼時に我々の派遣会社のスーパーバイザーから、こんな訓示がありました。

国会議事堂
写真=iStock.com/nyiragongo
※写真はイメージです

「国会レベルで給付金コールセンターのオペレーターの応対品質が問題になっています。これからは今まで以上に、入電者の気持ちに寄り添った対応を心がけてください」

具体的には、入電者がまだ話をしている時は絶対にオペレーターの側から言葉をかぶせないことを、まず強く求められました。

さらに、それまでは入電者とのやり取りの途中で相手が激昂して、「責任者に替われ!」と要求してきた場合でも、管理者が安易に交替したりせず、できる限りオペレーター1人で解決すべしとなっていた基本方針も、捨て去られました。

簡単に対応交替しないのは元々、各オペレーターのトークスキル習熟のためだったのですが、ヒアリングでの批判を受けて背に腹は代えられなくなったようです。入電者とのやり取りが長引いているオペレーターがいたら、リーダーやオペレーターがすぐに別の端末経由で会話の同時聴取を行い、話がこじれて相手の感情が高ぶってしまう前に積極的に対応交替する、と改められたのでした。だったら最初からそうすべきだったのでは、とも思いますが……。

そして最も馬鹿げたドタバタ劇、といえばやはり、9月以降のコールセンターの新設に尽きます。

「電通への丸投げ」といった批判を受けて、運営が別会社に

持続化給付金事業がゼロから立ち上がった際、経産省から受託したのは『サービスデザイン推進協議会』(以下、サ協)でした。これが「電通への丸投げ」ではないかとの批判を受け、9月以降は『デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社』(以下、デ社)が事業を受託することになったのです。

となると当然、5月からの給付金事務局関連組織は引き継がれません。デ社を頂点とする体制の中で、9月以降の申請者向けにホームページ、審査部門、振込部門、コールセンターなどをまた改めて作らなければならないのです。

これほど無意味なことってあるでしょうか。

本来必要なかった、同じ業務を行う組織をもう1セット立ち上げなければならなくなったのです。そして8月末までの申請者分の審査、書類不備連絡、入金、問い合わせ受け付けなどの業務は、9月以降も引き続き、私も属しているサ協体制の組織が行います。つまり、2セットの組織が並走するという……。

あれは、デ社と給付金業務の契約を行ったと経産省が8月中旬に正式発表してから、数日後のことだったと思います。その日の終業時間間際、私たちの派遣会社のオペレーターが固まって着台しているエリアまで、なにかの用事でコールセンター運営会社の社員が来ていました。

用が終わったタイミングで、我が社のスーパーバイザーがその社員に世間話を始めました。やり取りの内容は、すぐそばにいた私の耳にも入ってきます。