寿司屋の原価率は40%が一般的

【寿司】ちなみに、寿司屋の原価率ってどれくらいなんですか?

【大将】寿司屋の原価率は「40%が一般的」かな。

【寿司】確かに「原価率40%」はよく聞きますね。都内の弟子が多い寿司屋だと、原価率をそんなに高くできないから、30%の原価率でやっているという話もよく聞きます。

【大将】俺の修業先では、30%前半に抑えろ、みたいな感じで言われてたかな。そんなんでおいしいものを出せるのかよ、と疑問に思ってたけどね。

【寿司】なるほど。

【大将】だから修業先にいいイメージがなくてね……。でも正直、都内だとオーナーがいないとやっていくのは厳しいだろうね。土地代もあるし。東京の寿司屋は割高に感じてしまうな。地方で寿司屋を経営したほうが自分には合っている。俺はなるべく原価をかけないように市場で直接魚を買うようにしているよ。

【寿司】要は、仲卸を挟まずに、直接漁師さんから魚を買うということですか?

【大将】そうそう。仲卸を挟むメリットは、仲介料がかかるけどその分お店に届けてくれたりすること。それはそれでありだと思うけど、俺は産直での仕入れや、直接市場に行って自分の目で魚を選ぶようにしているかな。その分原価を少しでも抑えて、うまい魚を提供したいからね。

寿司屋はもうかる職業なのか

【寿司】東京と地方では魚の値段も全然違うんですか?

【大将】地方の市場は豊洲の魚を引っ張ってくることも多く、その場合輸送量が上乗せされる。意外と豊洲で買った方が安く済むなんてこともあるよ。例えばアナゴ。豊洲で買うと大体1kgあたり3500円。北海道の市場で同じアナゴを買おうとすると、1kg5000円。だから俺は豊洲の3500円のものを大量に仕込んで、冷凍しておくんだ。

撮影=寿司リーマン
産地はどこか。焼くのか蒸すのか。タレなのか塩なのか。例えばアナゴの握りだけでも十人十色だ。

【寿司】そうなんですね。おまかせの値段をまず決めて、原価率40%という制限の中で、使う魚を決めていく。価格設定の話、初めて聞きました。

【大将】マグロやカニ、カラスミの旬である冬の方が、どうしても原価率は上がるから、今の時期は正直つらいよ。でもいずれにせよ「損益分岐点」を超えればいい。俺は弟子がいるわけではないから、「もうけないといけない」というマインドがそんなに強いわけではないし。ほそぼそとお店が続けられたらいいかな。

【寿司】ぶっちゃけ、お寿司屋さんってもうかるんですか?

【大将】寿司リーマンさんだから詳しく話すけど、安定的に予約が埋まってくるようになれば、けっこうもうかるよ。たとえば客単価2万円、夫婦2人で経営、弟子2人のお店で“もうけ”を試算してみよう。月に25日間営業して1日あたり5人お客さんが来たとすると、月の売り上げは250万円。原価率が約40%なので仕入れに月100万円ほどかかる。弟子2人の給料に月50万円、家賃が30万円としても月70万円ぐらいは夫婦に残る計算になるよね。ここでは1日のお客さんを5人として計算したけど、もし10席のお店が毎日満席で2回転したら、単純計算で月の売り上げは1000万円。従業員の人件費や家賃も高くなるけど、もろもろの経費を引いても夫婦2人で月収200万円ぐらい稼ぐことも夢じゃない。原価率は一般的な飲食店(約30%)より高いとはいえ、客単価が高いからいい商売だよね。

【寿司】へえ~! もちろんそこまで人気店になるまでが大変だと思いますが、夢がありますね。