当然ながら、こうしたことをやるためにはキーパーソンがいる。それは、前田泰宏中小企業庁長官だと、文春は名指しする。ここは持続化給付金を所管しているし、前田の人脈の中にAもいる。
Aは、「政府がコロナ収束後に向けて1兆7000億円という破格の予算を計上した需要喚起策・GoToキャンペーンの運営を取り仕切る」(電通関係者)ともいわれているそうである。
同志社大学政策学部の真山達志教授のいうように、「電通などへの委託には不透明なところがあり、さらに役所と事業者の間に個人的関係まであるならば、さらなる疑惑を持たれるのは当然」である。
「ズブズブ」だったのが、一体化している
博報堂出身で作家の本間龍が雑誌「月刊日本」で、経産省は過去にもIT導入支援やIT補助金事業をサ協に受注し、電通が再委託していると書いている。昨年の消費税率アップの際も、キャッシュレス決済のポイント還元事業でも「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」に発注して、電通に再委託されたという。
政府広報費も、2014年に約65億円だったのが2015年度には約83億円に増額され、その約半分が電通に流れているそうである。電通を安倍が優遇するのはなぜか?
「マスコミをコントロールして政権を支えているからです。安倍政権は、メディアの政権批判を封じる上で、電通に頼らざるを得ません」(本間)
以前から自民党と電通はズブズブの関係だったが、安倍政権になって「一体化」しているようだ。
その関係が明るみに出てきたのは、安倍に反旗を翻す人間、官僚かまたは官邸の内情をよく知る人物が情報をリークしているからであろう。新聞やテレビは、電通に関わるスキャンダルはやらない。ゆえに文春砲へ持って行ったのではないか。
トランプ大統領落選がダメ押しになるか
そして、安倍政権崩壊の最後のダメ押しは、11月に予定されているアメリカ大統領選で、トランプが民主党のバイデンに敗れることである。
「米国のポチ総理」といわれ、トランプの威を借りて外遊を続けていた安倍は、トランプの度はずれたアメリカ第一主義に異を唱える欧米各国首脳から冷ややかな目で見られていた。
その後ろ盾がいなくなれば、トランプと一蓮托生と見ていた首脳たちは、安倍のいうことなど聞かなくなる。中国の習近平も同様であろう。
かくして、長くやっただけで、国民の暮らしなどに寄り添おうともしなかった安倍政権は、崩壊した途端、悪夢になって誰も振り返らなくなる。
Wikipediaには後年、こう書かれるだろう。
「第1次、第2次安倍政権は、長期政権だったことを除けば、アベノミクスは無残に失敗し、国民の年金積立金を株に投資してこれまた失敗。そのうえトランプ大統領のいうがままに無用な戦闘機などを大量に買わされたため、国の財政を破綻寸前まで追い込んだ戦後の歴代最悪の政権である」(文中敬称略)