長いだけが唯一の“勲章”だった安倍政権の崩壊へのカウントダウンが始まっている。それを水面下で推し進めているのが、人事権をちらつかせていうことを聞かせてきた官僚たちだというのも皮肉な話である。

ここへきて、電通と省庁との癒着構造が明るみに出てきているのも、政権が弱体化したことの証左であろう。

「コロナまで利用して金儲けしようとしているのか」

電通と政治との腐れ縁は長い。田原総一朗は著書『電通』の中で、主権回復後の1952年10月の選挙で電通が、日米安保条約の必要性を国民に理解させ、吉田茂の自由党への共感を深めさせる戦略を担ったと書いている。

週刊文春(6/11号)は「安倍『血税乱費』コロナ2兆円給付金を貪る幽霊法人の裏に経産省」というタイトルで、経産省と電通の癒着構造を報じた。

私は以前から、電通という会社を国策会社だと考えている。国策会社というのは「主に満州事変後、第二次大戦終了までに、国策を推進するため、政府の援助・指導によって設立された半官半民の会社」である。

もっとも電通側にいわせれば、「オレたちが国を操っている」というかもしれないが。

東京五輪招致は、電通の人間がIOC(国際オリンピック委員会)理事に巨額の賄賂を渡して成功させたという疑惑が色濃くある。

自民党の選挙広報のほとんどを担っているのも、原発の安全神話を作り出したのも電通である。安倍首相の妻・昭恵が結婚前にいたのも電通の新聞雑誌局であった。

今さら、電通と安倍官邸、官僚たちとの“癒着構造”など珍しくもない。だが、今回、文春が報じたのは、新型コロナウイルス不況で困っている中小、個人事業者向けの「持続化給付金」の給付業務を769億円で国と契約した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」(以下サ協)が幽霊法人で、749億円分の事業が電通に丸投げされていたという疑惑なのである。お前たちはコロナまで利用して金儲けしようとしているのかと非難轟々だ。

事業公募日とサ協の設立日が同じ日付

この協議会を運営するのはAという元電通社員(後に平川健司と実名で報道)。文春によれば、このサ協は経産省の「おもてなし」事業を公募で落札しているが、「不可解なことに公募の開始日と団体の設立日が全く同じ日付」(代理店関係者)で、設立時に代表理事を務めていた赤池学も「経産省の方から立ち上げの時に受けてもらえないか」と打診を受けたと証言しているのだ。

要は、経産省と電通との出来レースということだ。こんなことを、多くの国民が不自由な生活を強いられている時に、よくできたものだ。