「気が強い人」は男性にはあまり使わない

こうした例は、あなたの周囲でもきっと数多くあるはずです。たとえばある組織で「リーダー候補」とされる人物に対する評価が、「あの人はアグレッシブ」「とてもタフだ」「強引だ」といったものだとします。その人物が男性であった場合、その評価はとてもポジティブですよね。積極的で精力的、そしてたくましい。しかしそれが女性になると、今度は逆に、攻撃的で頑固、威張りちらしているといったネガティブなイメージになるという結果が出ているのです。

あるいは私たち金融業界でよく耳にする、女性に対する形容として、「シー・ハズ・シャープ・エルボー(彼女はとてもとがったヒジを持っている)」という言い方があります。とがったヒジで相手を押しのけて進む、つまり、彼女はアグレッシブすぎるという意味であり、男性には使われない表現です。日本でも、「気が強い」という表現は、主に女性にしか使われないネガティブワードですね。

褒め言葉の「アグレッシブ」でマイナス評価

他にも、競争心が旺盛おうせい、自信たっぷり、独立独歩、冷徹れいてつなど、男性においてはある種の褒め言葉になる表現が、女性に冠されたときにネガティブな評価として受け取られることがあります。それは昇進のプロセスにおいて――特に彼女をよく知らない人たちに印象を伝える場合には、細心の注意をはらって言葉を選ぶ必要があります。

たとえば営業でバリバリ稼いでいる女性社員がいたとします。彼女の昇進を推薦する文章に上司が良かれと思って「非常にアグレッシブです」と書いたのですが、それを読んだ年長の幹部たちが「性格がキツそうな女性だ」と受け取って「リーダーにふさわしくない」と評価してしまうかもしれません。あるいはある女性社員のクールで冷徹な判断が会社のビジネスを発展させるうえで非常に有益かもしれないのに、「そんな女性とチームを組むのは嫌だ」という現場の反発を招いて、彼女が働きにくくなってしまうといったケースも考えられるのです。

人を評価する言葉には、旧来のイメージがもたらした「無意識バイアス」がからみやすい。人材のマネージメントにおいては、できるだけジェンダー的に中立な言葉を用いることを心がけるべきでしょう。