昨年まではインバウンド効果で好調だったが…
計画初年度となった2019年度は、ゴールデンウィーク10連休や訪日外国人旅行者の増加などインバウンド需要の好調を背景とした、札幌都市圏と新千歳空港を結ぶ快速エアポートの利用増や、昨年10月に実施した運賃改定の効果が出て、第3四半期(累計)の時点で、年初予想を14億円上回る31億円の増収を記録するなど、好調に推移してきた。
ところが年が明けると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で62億円(JR北海道単体で42億円、グループ会社で20億円)の減収、50億円の減益となるなど、各事業の業績は急激かつ大幅に悪化した。
セグメント別にみても、主力の運輸業、小売業、不動産賃貸業、ホテル業のいずれも減収減益と厳しい数字が並んでいる。減収幅としては、新型コロナウイルスの影響で鉄道利用が自粛され、鉄道運輸収入が減少した運輸業が16億円の減、またビルメンテナンスなどその他事業が15億円の減となり、減収要因の大半を占めた。
小売・ホテル事業も休業が響いている
赤字路線を多く抱える同社にとって、増収を支えてきたのが小売業とホテル業だ。しかし、その頼みの綱も2度の緊急事態宣言のあおりを受け、足元が揺らいでいる。
第3四半期までは新店舗の開業効果や、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震による需要減からの反動増があったものの、新型コロナウイルスの影響で第4四半期以降は売り上げが落ち込んだ。また、不動産賃貸業においても第4四半期以降、札幌駅の駅ビルであるJRタワーのテナント売り上げが落ち込んだため、家賃収入が減少し、ともにわずかながら減収減益となった。
関連事業の柱となるJRタワーは4月18日から当面の間、休館となっており、タワー内のJR北海道ホテルズも休業が続いている。このまま新型コロナウイルスの影響が長引いた場合、北海道新幹線札幌駅隣接地に2029年開業予定の「新JRタワー」の計画見直しすら避けられなくなってくる。約40億円の増収を見込んでいただけに、感染が終息しなければ2031年度の経営自立はさらに難しくなってくる。
4400億円を投入しても抜け出せない赤字体質
国はこれまでJR北海道に対して、2011年度から老朽化した施設の更新などのために2800億円、2016年度から設備投資や修繕などのために1200億円を支出している。さらに、2019年度と2020年度に合計400億円の資金を投じ、国土交通省が主導する形で経営再建計画を進めてきたが、コロナ禍の影響で計画には早くも赤信号が灯ることとなった。