都市部の路線や北海道新幹線も危ない
危ないのは地方路線だけではない。インバウンド需要を取り込んできた北海道新幹線や、唯一のドル箱路線とされる新千歳空港―札幌とを結ぶ快速エアポートも、新型コロナウイルスの影響で利用が大きく落ち込んでいる。
同社の島田修社長は日本経済新聞(4月23日付電子版)のインタビューの中で、直近の北海道新幹線の利用状況は9割減、快速エアポートは7割減と、減収予測の算出時より利用が落ち込んでいることを明らかにした。同社は3月31日、新型コロナウイルスの影響により3月以降運輸収入が半減しているとして、4月から6月のグループ全体の減収額が少なくとも83億円に上るとの予測を公表している。
JR北海道は月次の利用状況を公開していないが、JR各社の月次情報と照らし合わせると、4月以降の利用状況は通常の80%近く減少しているものと考えられる。JR北海道の鉄道運輸収入は年間約700億円(1カ月平均約58億円)なので、4月から6月まで8割減の状態が続いたとすると、第1四半期の減収幅は鉄道事業だけで140億円にも達する可能性がある。
仮に7月以降の残り9カ月が3割減で推移したとしても、2020年度の旅客運輸収入は対前年比で約300億円落ち込む計算だ。実際、JR北海道は5月20日、2020年度の旅客営業収入の減収額が200~300億円の減収になるとの見通しを公表している。
このままでは今期中にも資金ショートに陥る恐れ
このように、北海道の緊急事態宣言が解除されても、JR北海道の成長戦略の要であった訪日外国人旅客を含めた旅行需要は、早期には回復しないと見られており、影響は長期化する可能性が高い。
すでに多くの税金が投入されている状況に批判も少なくないが、さらなる支援が得られなければ、JR北海道は今期中にも資金ショートに陥ることすら考えられる。そうなれば赤字路線全廃の可能性だけでなく、札幌周辺の基幹路線の減便、ひいては北海道新幹線の札幌延伸計画も頓挫する恐れがあり、観光業に力を入れる北海道の将来を左右することになりかねない。
島田社長は前出のインタビューで、「1987年の会社発足以来の危機だ」と述べ、「困ったら国が助けてくれるということから決別したのが国鉄改革であり精いっぱい努力するが、しのげない部分は国にお願いしなければならない」と、独力での対応に限界があることを強調。国に支援を要請していることを明らかにした。
もはやこの危機はJR北海道だけの問題ではない。新型コロナウイルスによって地方の公共交通は「交通崩壊」の危険を迎えている。地方交通事業者への支援を急がなければ、存続するか否かを話し合うより先に地方から公共交通が消えてしまうことにすらなりかねない。国と自治体は、地域の交通を守るための議論を急がねばならない。