簡単にだが、JR北海道の収益構造について説明すると、運輸業の生み出す500億円以上の赤字を、不動産賃貸業やホテル業など関連事業の100億円程度の利益で補い、残りの400億円を経営安定基金の運用益(国鉄民営化時に鉄道事業の赤字を穴埋めするためJR各社に創設された営業外収入)と、経営再建のために国と北海道から支出されている補助金(特別利益)で相殺する形になっており、2020年3月期の最終的な親会社株主に帰属する純利益は19億円の黒字を計上している。
だが、もちろんこの補助金は永続的なものではなく、今年度いっぱいで根拠法が期限切れとなるため、新たな支援スキームの構築が不可避となる。にもかかわらず、経営再建には道と沿線自治体からの支援が不可欠とする国と、JR北海道の経営危機は国鉄民営化スキームの失敗であり、支援は国の役割だとする道との対立の溝は埋まっておらず、今後の支援スキームの構築はいまだに不透明な状況にある。
廃線検討中の地方路線はどうなる?
ここで気になるのは、JR北海道が抱える赤字路線の存続の行方だ。2016年に同社が発表した10路線13線区のうち2線区がすでに廃線しており、3線区については廃線、バスへの転換を要望している。しかし、それ以外の8線区について、路線を維持するためのスキームの構築には至っていない。
8線区が生み出す赤字は約120億円。国は、道と沿線自治体が路線存続のために同額を負担することを前提に、年間40~50億円程度を支援する枠組みを検討しているとしているが、道と沿線自治体は利用促進策以外の負担には応じないという姿勢を明確にしている。
もちろん、資金難の道や沿線自治体が何十億円という設備更新費、修繕費を負担することはたやすいことではないだろう。しかし、誰かが費用を負担しない限り、赤字路線を存続させることはできない。国も自治体も支援をしないとなれば、路線は廃止せざるを得なくなる。それが地元や沿線の熟慮の結果であればやむを得ないが、これまでの議論を見る限り、当事者たちはどこか他人事のようにも見える。
廃止した場合の通学への影響や、冬季の輸送の確保などを考慮した上で、それでも費用が便益を上回るのであれば、8線区の一部ないし全部の廃止という選択肢もあってしかるべきだろう。問題は、その決断を先延ばしにし、誰かが助けてくれるのを待ち続けるという姿勢である。それは経営が破綻するまで問題を先送りにしてきたJR北海道と何ら変わらないのではないだろうか。