コロナで「考え直す機会」が与えられた

日本政府観光局の「訪日外国人の消費動向調査」(2019年7~9月期)によると、出発前に役に立った情報源の1位はSNS、2位は個人のブログ、6位には動画サイトが急上昇している。

人気の外国人インフルエンサーや映像クリエイターには地域プロモーション企画の依頼が殺到。制作者の作風に依存した動画は、ドローンで上空から撮影された東北の太平洋と山陰の日本海の違いも没個性化させ、映画の予告編のような演出で外国人の反響をコメント欄に集める。

成果として報告しやすいページビューや動画再生数といった数値を達成するためにGoogle、YouTube、Facebookなどにデジタル広告を出稿し、その予算はGAFAの一角を占めるグローバル企業や、それを取り扱う東京のソリューション企業に落ちる。

「3000万人までは順調に伸びた訪日外国人が、政府が2020年の目標とする4000万人を手前にブレーキがかかったのも、日本がまだ4000万人を迎えられる器でなかった、という警告かもしれません。危機にはプラスの面もあります。これ以上エスカレートしたら取り返しがつかなくなる手前で立ち止まって、考え直す機会が与えられたのではないでしょうか」と高橋氏は言う。

観光産業の回復には1~2年かかる

「日本のどこに行っても人が親切だ、と外国人旅行者が好感を覚えていたのに、過剰な数の観光客が集まる『オーバーツーリズム』によって地元住民の反感感情が観光客に向けられるような異文化摩擦が起きたら、それまで積み上げた日本の評判も、不評に転じてしまう」。

ヨーロッパの主要観光地では、「オーバーツーリズム」が近年深刻だ。スペインのバルセロナは、1992年の夏季五輪以降、順調に観光収入を伸ばし、世界の観光都市の模範的存在だったが、民泊物件急増による家賃高騰や外国人観光客による市場の大混雑などにより、住民の観光客排斥感情が高まった。

日本でも京都をはじめ人気観光地では、観光客で込み合う路線バスに地元住民が乗れない、食べ歩き商品をそろえ観光地化した市場からは地元住民の足が遠のく、外国資本が町家街にそぐわないホテルを着工するなどの現象に対し、増え続けたホテル客室数の過剰感とともに警戒が高まっていた。

国連世界観光機関(UNWTO)の最新予測によると、2020年の国際旅客数は前年比20~30%減少と、21世紀最大の落ち込みに。マッキンゼー&カンパニーは、2020年の航空旅客需要は31~45%減、需要が以前の水準に戻るには1~2年とリポートしている。新型コロナウイルスのワクチン開発と実用化にかかると言われているのと同様の期間が、観光産業の回復にも必要という観測だ。