過去最高だった2019年を上回るペース

7月19日、政府観光局(JNTO)は6月の訪日外客数(推計値)を発表した。それによると、6月単月でわが国を訪れた外国人は313万5600人、1月~6月期の累計来訪者数は1777万7200人だった。

今年上半期の来訪客数は、過去最高だった2019年の同時期を100万人以上上回った。来訪客数が増えている分、インバウンド需要も着実に増加している。国・地域別にみると、コロナ禍の発生以前に最大だった中国の割合が低下し、米国、欧州諸国など相対的に所得水準の高い国からの来訪者が増えた。

人で埋め尽くされた浅草寺仲見世商店街
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足許の国内経済を見ると、個人消費は盛り上がりに欠けている。米国向けの自動車の輸出は堅調を維持しており、人手不足に対応する省人化や半導体関連分野が堅調な展開になっている。それに加え、訪日外客数の増加に対応するため設備投資を行うホテルなども増えた。盛り上がるインバウンド需要を反映して、百貨店などの企業業績も改善傾向にある。

円安傾向が続いていることもあり、当面、訪日外客数は増加傾向で推移することが予想される。ただ、景気低迷が続く中国からの訪日客が、今後、どのような展開になるかは気になるところだ。インバウンド需要の重要性が高まっていることもあり、これからの来訪客数の推移が注目される。

ペントアップ需要と円安でどんどん日本にやってくる

コロナ禍の発生により、わが国のインバウンド需要は一時大きく減少した。2019年、3188万2049人だった訪日外客数は2020年に前年比87.1%減の411万5828人、2021年は同94.0%減の24万5862人まで落ち込んだ。

2022年10月、政府は個人旅行の受け入れ、査証(ビザ)免除措置の再開等を実施した。そうした措置に加えてコロナ禍が下火になり、インバウンド需要は持ち直し、2022年通年は383万2110人に増えた。

感染防止のために世界各国が実施したソーシャルディスタンスや入国制限が解除されるに伴い、自粛してきた海外旅行を復活させたいというペントアップ・ディマンド(繰り越し需要)により、わが国のインバウンド需要は急回復し、2023年の訪日外客数は2506万6350人に増加した。

円が独歩安の展開になったことも追い風だ。今回の円安トレンドでは、2021年の年初から今年6月末まで、主要先進国、中国などの新興国の通貨に対して円は独歩安だ。