中心だった中国客が減少し、欧米客が増加

円安により、来訪客はわが国で割安にモノを買い、サービスを受けることができる。1ドル=100円の時、1万円の買い物をするためには100ドル必要だ。1ドル=150円に為替レートが変化すると(ドル高・円安)、66.66ドルで済む(外貨両替手数料はゼロと仮定)。アジアから東京を訪問する観光客の中には、自国よりも日本で欧州の高級ブランドバッグなどを買ったほうが安く済むと話す人も多い。

そうした円安の効果もあり、今年上半期、来訪客数は急速に伸びた。国ごとに訪日者数を確認すると、コロナ禍前後でその顔触れは大きく変わった。2019年、訪日外客数の30.1%は中国(香港を含むと37.3%)だった。それに対して、欧州は6.2%、米国は5.4%程度だった。

今年1~4月の累計で中国は17.5%(香港を含むと23.6%)と減少した。韓国と台湾からの来訪者の水準に大きな変化はない。それに対して欧州は8.6%、米国は7.5%だった。

中国ではゼロコロナ政策、不動産バブル崩壊などで景気は停滞気味だ。一方、米国経済は実質賃金の上昇により個人消費は底堅さを保った。わが国同様、スペインやイタリアでも中国人観光客は減り、米国などからの来訪客は増加傾向にある。

「1万円の宿泊規程」では出張もできないほど高騰

海外からの観光客などの増加は、これまで内需関連といわれた企業の収益環境を変化させている。影響が波及するのは、宿泊、百貨店など幅広い。宿泊業界ではホテルの平均客室単価が上昇傾向だ。

米コスターグループ傘下のSTRによると、2024年4月、国内ホテルの平均客室単価は前月比4.7%上昇の2万1902円だった。東京は3万3344円、1996年以降の最高水準に上昇した。欧米からの長期滞在客の増加もあり、宿泊料金は押し上げられている。

5月の客室単価は、花見客の減少などにより全国平均で2万299円に下落したものの、水準自体は相対的に高めだ。宿泊料金の上昇により、国内出張時の宿泊費の規定(1万円程度)を見直す国内企業も増えた。

来訪客の影響もあり、百貨店の売り上げも伸びている。日本百貨店協会によると、5月の全国百貨店の売上高は前年同月比で14.4%増加の約4692億円だった。27カ月連続で売り上げは増えた。インバウンド関連の売り上げに限ってみると、同231.2%増の約718億円に増えた。2014年10月にデータの公表が始まって以来の最高額を3カ月連続で更新した。