世界的な移動の抑え込みで観光業界は大打撃

コロナ禍が、世界の観光業界を直撃している。感染対策のために、世界の主要国は当面の経済成長を犠牲にして、人の移動を抑え込んでいる。それでなくてもコロナウイルスに恐怖を抱いているので、政策的に人の動き(動線)を抑制すれば旅行をしたいと思う人が減るのは当然だ。

人がまばらな東京・浅草の雷門=2020年4月12日、東京都台東区
写真=時事通信フォト
人がまばらな東京・浅草の雷門=2020年4月12日、東京都台東区

わが国各地の観光地や首都圏では、観光客の姿があまり見られなくなっている。海外でも、中国人観光客でにぎわったミラノなどから人気が去った。世界の観光需要は、コロナ禍で瞬間蒸発したといっても過言ではない。それにともない、国内外の旅行代理店をはじめ、バスや鉄道などの陸運、空運、飲食、旅館、ホテル、リゾート運営など広範な業種で業績の悪化懸念が急速に高まっている。

観光需要の消滅は、わが国経済にとって無視できない変化だ。2012年12月以降の日本経済にとって、中国、韓国、台湾などからの外国人観光客の増加は、緩やかな持ち直しを支える重要な要素の1つだった。海外からの観光客の増加(インバウンド需要)は、東京圏への人口集中を是正し、地方創生にも大きな役割を果たした。

これまで海外からの観光需要に依存してきたわが国は、その経済の運営方法を見なおさなければならない。わが国政府にとって、かなり重たい課題になりそうだ。