世界全体で人の動きはいつまで止まるのか

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、わが国の観光業界はかなり厳しい状況を迎えている。事態はさらに悪化する恐れがある。

わが国をはじめ、米欧、アジア、南米、アフリカなど世界全体で新型コロナウイルスの感染は深刻だ。すでに米国では感染によって4万人以上が亡くなった。米国の低所得層は十分な医療サービスにアクセスすることが難しく、事態はかなり厳しい。イタリア、スペイン、イギリス、フランスでも死者数が1万人を超え、米欧各国で医療体制が崩壊の危機に瀕している。

ワクチンの開発が進む中、感染拡大を防ぐために各国は国境を封鎖し、人の外出を制限しなければならない。世界全体で人の動きの遮断は長期化するだろう。問題は、それがどの程度の期間に及ぶかが読めないことだ。

人が自由に外出できないため、世界全体で経済活動の水準が大幅に落ち込んでいる。つまり、需要が消滅し、供給体制も崩れはじめている。世界の観光業界はその典型例だ。国内であれ海外であれ、人々が旅行することがウイルスを各地にまき散らす。各国は旅行の禁止・自粛を徹底しなければならない。

逼迫する企業の資金繰り、米ボーイングにも公的支援

また、観光業界以外の状況もかなり厳しい。需要の低下、供給網の寸断から企業の収益懸念が高まっている。さらに、多くの企業で資金繰りが逼迫ひっぱくしつつある。

米国では航空機大手ボーイングに対してドナルド・トランプ政権が公的支援を表明するなど、製造業・非製造業ともに企業の経営体制が急速に不安定化している。ボーイングに関しては、さらなる支援が必要になるとの懸念も高まっており、日に日に世界経済の下振れリスクが高まっている。

さらに、人々の所得・雇用環境も悪化しはじめた。近年の世界経済を支えてきた米国では、失業者が急増している。3月以降の4週間で米国の新規失業保険申請数は2200万件を突破した。

米FRB関係者は、4~6月期に失業率が30%に達するとの見方を示した。コロナ禍により世界各国で企業業績、所得・雇用環境の悪化は避けられない。それは観光など余暇への支出を減少させる。