実効再生産数が「1」を下回り、感染は収束に向かっている

専門家会議で示されたデータによると、1人の感染者が他人を感染させる平均人数を示す実効再生産数は、全国では3月25日に2.04、4月10日には0.71に下がった。東京都でも3月14日に2.64人、4月10日には0.53人と落ちた。実効再生産数が1以下の状況が続けば、感染は収束に向かう。その意味でこれまでの日本の対策はうまくいっていると判断できる。

しかし対策を緩和すると、どうしても感染拡大が再燃する危険はある。ここで求められるのが前述のロードマップである。まずは感染者数がどの程度減れば宣言が解除できるかの目安となる数値がほしい。具体的な数値が国民の前に示されれば、国民はその数値を目標にできる。

さらに解除時点では治療薬が必要不可欠である。有効性と安全性が確認された治療薬が使えることで、国民の不安が減り、結果的に防疫に役立つ。

なぜ安倍政権は「ロードマップ」を示さないのか

5月5日付の朝日新聞の社説は「緊急事態延長 長丁場想定し戦略描け」との見出しを掲げ、冒頭部分でこう訴える。

「『遅すぎ、少なすぎる』との批判が絶えないこれまでの施策を練り直し、人々の命とくらしを守り通す責務が、政府にはある。あわせて、社会経済活動をどうやって元の状態に戻してゆくか、有効な戦略を立て、具体的なデータを示して国民に説明し、認識を共有するよう努めなければならない」

政府には私たち国民の生活を守る責任と義務がある。それにもかかわらず、安倍政権は社会経済活動をもとに戻すためのロードマップを具体的に示していない。5月14日を目途に専門家が感染の状況を分析して一部の地域で宣言を解除していくというが、それまでにはしっかりしたロードマップを提示してほしい。

朝日社説は指摘する。

「ウイルスの厄介な性質を改めて感じさせるのが、専門家会議が提唱した『新しい生活様式』だ。新規感染者が限定的になった地域向けのものだというが、多くの人が『今は緊急事態だから』と受け入れている制約や留意事項がそのまま盛り込まれた。政権が掲げる『V字回復』の難しさを物語る内容だ」

沙鴎一歩もこの新しい生活様式には疑問を感じる。感染拡大の防止で実施されているこれまでの対策を暮らしに取り入れることを求めているからだ。