いつになったらもとの日常に戻ることができるのか
政府は5月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ、緊急事態宣言を延長することを正式に決定した。決定後の記者会見で、安倍晋三首相は「コロナの時代の新たな日常を一日も早く作り上げなければならない。緊急事態のその先にある出口に向かって一歩一歩前進していきたい」と述べ、「新しい生活様式」を提言した。自粛疲れや経済へのダメージを緩和しながら、感染拡大を抑え込みたいようだ。
しかし、安倍首相は感染者数がどの程度減れば宣言が解除できるかなど、具体的な目安を明らかにしていない。国民に宣言解除に向けたしっかりしたロードマップを示してほしい。このままでは不安にさいなまれるだけだ。果たして私たちはいつになったらもとの日常に戻ることができるのか。
感染症対策の基本原則は、人の移動の制限と患者・感染者の隔離である。
この原則に基づいて緊急事態宣言が4月7日に発令されて以来、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、不要不急の外出の自粛が強く求められ、3密(密閉・密接・密集)が生じるイベントやスポーツ大会などの中止や延期が次々と決まった。学校や一部の店舗も閉鎖された。
一方、世界では日本が緊急事態宣言を発令する以前から外出を厳しく禁止し、市民に長い自宅待機を課した。中国では1月23日、世界で最初に感染が始まった湖北省の武漢(ウーハン)市をロックダウン(封鎖)した。イギリスでは国民に対して「家にいなくてはならない」と要求した。感染者が急激に増加して死者の数が増えたイタリアでは期間を決めて外出を禁止した。フランスでも外出が厳しく制限された。アメリカでは多くの州が在宅勤務の義務化に踏み切った。
ところが、ここに来て世界に緩和の動きが出ている。中国や欧米はこれ以上、人の移動を制限すると、社会や経済が持たないと判断したのである。