「古文」の知識で自分をアピール!

【三宅】ハーバードは行こうと思って入れる大学ではないはずですが、なにか秘訣は?

【ロバートソン】全米共通テストについては、日本でまともに勉強をしていれば理数系の科目で100点を取ることは難しくありません。人文系の科目はアメリカ史をやっていないハンデがあったものの、なんとか上位5%以内に入ることができ、受験資格を得ることはできました。

合格の決め手となったと思っているのは、自分で創作する自己推薦パッケージです。ハーバードでは「世界にひとつだけのあなたの価値をアピールしてください」というテーマでした。文章でもいいし、作品でもいいと。

「価値と言われても日本とアメリカの間に挟まっているだけだし」くらいの自己認識だったのですが、その経験をプラスに転じさせようと「私は1000年前の日本の古語の勉強を通して日本人固有の感性を学んでいます」と書いたのです。ようは古文のことなのですが。

【三宅】ものすごく専門性が高そうに見えますね(笑)。

【ロバートソン】「日本人は満月の輝きよりも欠けた月、満開の桜よりも散った桜を好みます」とか、「英語には『雄弁は銀。沈黙は金』ということわざがありますが、日本では金より銀のパビリオンのほうが奥ゆかしく感じられます」といったことを書きました。

すると採点者の誰かが感動してくれたようで合格通知が届きました。

日本人の鎧を身にまとったハーバード時代

【三宅】アメリカの大学に行かれてどうでしたか?

三宅 義和『対談(3)!英語は世界を広げる』(プレジデント社)

【ロバートソン】アメリカには10年いましたが、正直アメリカのほうが辛かったですね。馴染みきれなかったと言いますか。アメリカ社会の本流についていけない違和感が常にあって、折に触れては「僕は大和魂だから」とか「日本人の血を受け継いでいるから」と主張して、不安を克服していました。引きこもりだったわけではないですが、精神的に籠城していた感じです。少しやりすぎた気もしますけどね(笑)。

【三宅】異文化交流は綺麗ごとではないと。

【ロバートソン】少なくとも私はそう思います。

【三宅】ちなみに日本語を話すときと英語を話すときで性格が変わったりしますか?

【ロバートソン】ああ、そう言われると当時は人格が分かれていたかもしれません。ただ、日本に戻って29年。段々とそれが僕の中で融合してきて、いまはあまりズレを感じません。

(構成=郷 和貴)
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