事態が深刻なNY市民を励ますクオモ州知事の「神会見」
海外に目をやれば、アメリカではトランプ大統領が、相変わらずの「スタンドプレー」という迷走を繰り広げている一方で、ニューヨーク州のクオモ知事は、現場の第一線に立ち、精緻にして大胆なコミュニケーション戦略を展開して、人気を高めている。
ニューヨーク州はアメリカの中でも、最も事態が深刻で、非難の声もある。だが、クオモ知事の毎日のブリーフィングによって、全米中の人々が励まされている。
クオモ氏は、ニューヨーク州知事を務めた父のもとに生まれ、弟は、CNNの有名なアンカーマン。バツイチ、独身の62歳である。かつては「人間ブルドーザー」「すべての人を釘とみなす『ハンマー』」と称されたこともあり、決して好感度の高い人物ではない。しかし、こうした危機時には、その独自のスタイルが奏功している。
毎日行われるブリーフィングが本当にすごい。何がすごいのか、筆者はそのポイントを以下の10項目に整理できると感じた。
クオモNY州知事のここがすごい
①迅速かつ頻繁
毎日、一回一時間ぐらいをかけて、何が起こったか、何か起きているのか、これから何が起こるのかをきめ細かくブリーフィング。もちろん、記者たちなどオーディエンスはたっぷりと間隔をあけて座っている。
②徹底した情報開示
「11万のベッドが必要になるかもしれません。一方で、われわれの現在のキャパシティーは5万3000ベッド。3万7000人がICUで呼吸器付きのベッドが必要となるかもしれません。しかし、今あるのは3000。これは、皆さん、問題です」。ファクトに基づき、具体的な数字を上げながら、ネガティブな情報も一切包み隠さずに開示する。
③圧倒的なわかりやすさ
彼は原稿を見ず、すべて自身の言葉で話す。その動画の横にはパワーポイントの映像が映し出されており、口頭ではわからない数字やデータ、ポイントがビジュアルで、すぐに理解できるようになっている。さらに感染者拡大のカーブを「波」に例え、「皆さん、カーブの話をしていますね。このカーブは波。高ければ、医療システムを破壊します」と効果的に比喩を使う。「ピークの山」の話も彼の手にかかると、子供から高齢者まで全国民があっという間に理解できる。
④劇場感
ビジュアルな臨場感を演出するため、時には、山積みになったマスクや医療機器の前で、時には、臨時病院に転用した大規模コンベンションセンターに並んだ病院ベッドの前で、ブリーフィングを行う。見る人に「ここまで準備をしている」と直感的にわかってもらうのだ。
⑤専門性
常に専門家の医師や軍人など専門家と並び、一体になり、高い専門性をもって事態に対処していることをアピールする。