「ご協力を」「きめ細かな支援」……抽象的な言葉を並べた安倍首相
安倍首相は3月28日、コロナウイルスの感染拡大について3回目の会見を開いた。
その会見スタイルはこれまでと同じで、プロンプター(原稿が映し出される透明のボード)を見ながら、用意された原稿を一字一句漏らさず、読み上げていた。安倍首相は両側に設置されたプロンプターを交互に見るため規則的に左右に目をやる。その姿はロボットのように不自然で、聞き手(視聴者である国民)からすると、誰を向いて話しているのかわからない居心地の悪さがある。
何より、「彼自身の言葉」という感じが全くしない。
「ご協力を」「徹底的に下支え」「きめ細かな支援」「笑顔を取り戻す」といった抽象的な言葉を並べながら、行間にメッセージをにじませる。これこそ日本のお家芸である「以心伝心」「忖度」のコミュニケーションスタイルだろう。
「○○してまいります」という未来形に国民は不安を覚える
また、これまでと同じく「○○してまいります」という未来形が続くため、本当にこれで有事対応できるのかと心配になる。
もちろん人々の安全を確保しながら、経済を回すというのは大変に高度なかじ取りを求められる。あいまいな物言いをしなくてはならないのだろう。だが、そのあまりの歯切れの悪さ、中途半端さが、なんとももどかしい。
さらに気になるのは、このご時世に、ぎゅうぎゅう詰めの記者席だ。記者は記者で、事前に用意してきたような質問を順番に読み上げているようで、緊張感も臨場感もない。結局、せっかくの記者会見が「記者クラブ向けの内輪の儀式」になっていて、国民に正面から向き合っているようには見えない。
世界のリーダーたちは違う。ドイツのメルケル首相、イギリスのジョンソン首相などは、動画を通じて、国民に向けて直接メッセージを送るというスタイルをとっている。
会見にせよ、ビデオメッセージにせよ、本人の思いのこもった切実なメッセージであるべきで、国民一人ひとりの心にしっかりと届くような情報発信の形を考える必要があるだろう。