マンションやアパートを借りる時、仲介業者から鍵の交換代や退去時のルームクリーニング代などの負担を求められることがある。元日本女子大学教授の細川幸一さんは「この春、新宿区のマンションを借りた際に、私も求められた。法律や国交省のガイドラインの趣旨は守られておらず、入居者に負担が押し付けられている現状がある」という――。

部屋探しでモヤモヤした特約と過剰なオプション

この春に執筆活動用の書斎として新宿区のマンションの一室を借りた。

最終的にはおおむね条件に合った部屋を見つけることができたが、不動産仲介会社で賃貸借契約を結ぶ際、その内容に納得がいかないものが多々あった。

借主である自分に不利になると思われる条件があったり、「こんなものも必要なのか?」と思えるオプションが提示されたりした。

住宅販売契約に署名する男性の手元
写真=iStock.com/xijian
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例えば、国交省のガイドラインでは大家(貸主)が負担されるべきものとされる、退去時のルームクリーニング代とエアコン内部洗浄代金が、特約で借主(筆者)の負担となっていた。ガイドラインを示しながら仲介会社にこの点を指摘したところ、「やめてもらって構いません」と言われ、交渉の余地はなかった。クリーニング代は約4万円と聞いた。もっと安い業者があるから自分で探すと伝えても、反応は同じだった。

筆者は立地や家賃の条件を優先し、特約に盛り込まれた内容に合意したが、モヤモヤした気持ちが残り続けた。本来、借主が負担するべき原状回復義務のないものだからだ。

筆者が受けとった東京都賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書の特約部分
筆者提供
筆者が受けとった東京都賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書の特約部分

住宅を借りる契約をするときは、貸主と借主が直接契約することはまれで、多くは、不動産会社が仲介するのが一般的だ。当たり前だが不動産仲介会社は営利企業だ。また、借主は通常「一見さん」であるが、貸主とはその地域で継続的な関係を築きやすい。したがって賃貸借の条件は貸主や不動産仲介会社に有利なかたちで提示されることも多い。

私たち消費者が、賃貸住宅を借りる上で損をしないためにはどんなことに気を付ければいいのか。今回の部屋探しで痛感した問題点・注意点から検討したい。