そもそも「家賃1カ月分の仲介手数料」はオカシイ

不動産仲介会社は賃貸契約に関する仲介手数料で利益を得る(売買契約の仲介手数料も同様)。仲介手数料は家賃の1カ月分(消費税を加えて1.1カ月分)という表示をよく見かけるし、それが当たり前と思っている消費者も多いだろう。

しかし、宅地建物取引業法によって、借主と貸主から受け取れる手数料の上限はそれぞれ「賃料の0.5カ月分以内」(消費分を加えて0.55カ月分)と定められている。ただし、法律の例外規定によって、依頼者の承諾があれば、どちらか一方から賃料の1カ月分以内までの手数料を受けることができる。

つまり、例外規定によって借主が家賃1カ月分の手数料を払っても違法ではなくなり、むしろ一般的になってしまっているのだ。宅建業法の本来の規定どおり、手数料を0.5カ月分としている不動産会社もあるので、家探しはまず不動産会社探しからするとよいだろう。

ただし問題はそう単純ではない。仲介手数料を0.5カ月とする物件は、その分、貸主の利益が減るわけで、家賃そのものを高くしている恐れがある。結局、後述する敷金や礼金などの総額で判断する必要がある。

契約書とボールペン
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原則は家賃の0.5カ月分

仲介手数料の値下げ要求はできるのか。むろん交渉は自由だが、不動産会社が容易に応じるとは思えない。だが諦めてはいけない。家賃の値下げ交渉のカードには使える。何もないよりも説得力があるだろう。

ちなみに、仲介手数料ゼロ、あるいは不要という物件もある。貸主が1カ月分を払うことに同意していれば、借主の負担はゼロだ。ただそうした物件は借り手が見つかりにくい理由があるからかもしれないので注意が必要だ。また不動産会社自身が所有する賃貸物件の場合は仲介業務そのものが存在しないので手数料は不要ということになる。

近年、不動産業界で注目された判決があった。東京高裁の2020年1月14日判決で借主が不動産会社大手の東急リバブルを相手取って、すでに支払った仲介手数料1カ月分のうち半月分の返還を求めた裁判で、借人の請求が認められたのだ。

この裁判ではいつ承諾を得たかが争われた。裁判所は、東急リバブルは借主に対して事前説明を行っておらず、承諾を得ていなかったと判断した。ただし、裏を返せば「事前に説明し、承諾があれば家賃1カ月分の手数料をとっても問題ない」ということであり、現状を追認した形になった。

法律の原則が、例外規定によって歪められている現状は、明らかにおかしい。例外規定は削除すべきだ。少なくとも不動産会社は「本来は0.5カ月分の手数料が法の原則だが、例外的に1カ月分を徴収する」と借主に明示すべきだろう。