【連載 #私の失敗談 第13回】どんな人にも失敗はある。衆議院議員の小沢一郎さんは「大学受験では2浪した。政権交代では2回とも自民党に政権を奪われたが、この失敗は必ず3回目の成功の基になる」という――。(聞き手・構成=ジャーナリスト・城本勝)
小沢一郎氏
撮影=遠藤素子
衆院議員の小沢一郎さん。当選回数は現職のなかで最も多い18回を数える。

名門高校に合格して油断、大学受験で2浪した

剛腕、壊し屋、権力闘争の人……小沢一郎を彩る形容詞は、暗く険しい言葉が多い。

2度にわたって自民党を野党に転落させながら、幾つもの政党を壊しては政治の混乱を招いても来た「悪役イメージ」だ。その悪役は敗北や挫折があってもその都度しぶとく立ち上がってきた。過去のことに囚われず、常に前進してきた。

40年近く小沢一郎を間近で取材してきた私も、小沢の口から反省や後悔の言葉を聞いた記憶はほとんどない。「失敗を認めない男」というのも数ある小沢神話の一つだ。

このインタビュー「私の失敗談」を打診した際も、正直すぐにはウンと言わないだろうと思っていた。ところが、おずおずと切り出した私に小沢は、いともあっさりとこう言った。

「失敗は、いっぱいあるさ。失敗は成功のもとだもんな」

いちばん最初の失敗は大学受験です。2浪したからね。

僕は中学3年になる時、水沢(父・小沢佐重喜元衆院議員の地元、現在の岩手県奥州市)から東京に転校してきました。この時は、それはもう一生懸命勉強した。人生で一番勉強したんじゃないかな。それで都立小石川高校にほぼトップクラスで合格できた。田舎から出てきてすぐだから、それでちょっといい気分になって、遊んでいたんですね。

「何事も、やれるときに全力でやることが大事」

なめてかかったというか、大学受験など何てことないと思っていた。それがやっぱり油断大敵。東大を目指して結局2年浪人することになった。学校の勉強だけでなく、何事も、やれるときには全力でやることが大事だと思います。過ぎてからでは、もう挽回できない。だから、その反省がものすごくありますね。

2浪して慶応(義塾)大学の経済学部に入ったが、大学ではあまり反省が役に立ちませんでした。おやじが、体も悪くして元気がなくなってしまい、家で一人で酒を飲むようになった。

それまで全然家に帰ってこなかったおやじが一人でちびちび酒を飲んでいたから、かわいそうになって。夜はおやじの酒飲みの相手みたいなことをずっとしていました。大学時代はそんなに遊び惚けていたわけではないけど、充実した感じではなかった。

小沢一郎氏
撮影=遠藤素子
中学、高校、大学時代を振り返る小沢さん。