身動きが取れなくなった2度目の政権交代

自民党は政権を維持するためなら手段を選ばない。いまもまた、窮地に立った自民党は、かつて社会党の党首を担いだように、野党を取り込む連立も狙っているはずだ。小沢の言葉からは、そうした警戒感もうかがわれた。

そして、最初の政権交代から16年経ってまた失敗が繰り返される。2度目の失敗は、国民からの圧倒的な期待を受けて誕生した民主党政権が、わずか3年で瓦解したことだ。

2度目の失敗は2009年の政権交代です。民主党政権はなぜ3年で倒れ、自民党に再び政権を奪われたのか。その大きな原因は官僚との対決があったからです。

僕個人のことで言えば、「あの事件」によって身動きが取れなくなった。大勢の検察官僚が僕の動きを阻止しようとした。そうとしか考えられない。

小沢一郎氏
撮影=遠藤素子
陸山会をめぐる事件を、小沢さんは今どう考えているのか。

あの事件とは、小沢の資金管理団体・陸山会をめぐる事件だ。政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で元秘書3人が2010年、東京地検特捜部に逮捕・起訴された。小沢自身も11年に検察審査会の議決で強制起訴されたが、翌年には無罪が確定した。

あの事件は、闇献金や不正など全くないのに、検察が無理やりこじつけて立件した。悪いことなど何にもない。石川君(筆者註:石川知裕元衆議院議員、小沢の秘書時代に虚偽記載を共謀したと逮捕・起訴された秘書の1人。石川は一貫して無実を主張し、特捜検事が調書を改ざんしていたことも明らかになったが、裁判では有罪が確定し、議員を辞職した)もかわいそうだ。今回の自民党派閥の裏金問題は完全に法律違反をしているのに何もおとがめなし。石川君は何にもやってないのに議員辞職をすることになった。

これによって僕は民主党政権に手を付けられなかった。検察の捜査があって動けなかった。ひどいもんだ。検察は僕を陥れられなかったけど、動きを封じることができた。結果としては成功したのでしょう。彼らの思惑一つでどうにでもできる生殺与奪の権を握る今の検察の現状は恐るべきものです。検察、裁判所という司法組織は大改革しないといけないと思っています。

いまの政治家に欠けている重要な資質

――民主党政権の失敗の原因として、官僚をうまく使うことができなかったという指摘があります。それについてはどう考えていますか。

それは政治家の資質の問題です。何やっていいのか分からない政治家が多かった。

僕たちは官僚主導ではなく政治主導を掲げて選挙に挑み、政権交代を実現させた。民主党は政権党であり、自分たちが政府そのものなんだから、自分で物事を決めて自分で実行できなければいけない。何でも役人の顔色を見て、役人に教わってやるからダメだった。

政策の細かいことは役人のほうが知っているに決まっている。しかし基本的な大方針を政治家が持ち、自らの責任で役人に指示をしなければならない。政治家は倫理や哲学を持たなければいけない。

政治家にそれがないから役人に馬鹿にされて、民主党は浮き草のように漂ってしまった。それは今の立憲民主党にも言えることです。これを何とかするっていうのが大変なんですね。

小沢一郎氏
撮影=遠藤素子
政治家に必要なものは倫理や哲学を持つことだという。