反省よりも、「できたこと」を確認し自信をつける
ちょっとした工夫でしたが、それによって選手たちは声を出すようになり、トレーニング空間に活気が生まれました。このことは、日に日に厳しくなっていくストレングスのセッションに耐えうる雰囲気作りにつながっていきました。
さらにコミュニケーション力アップに貢献したのが、廣瀬選手が提案した「バディーシステム」です。選手が2人組のバディーで話をする機会を設けたのです。
練習前には必ずミーティングがあり、コーチから全体に、またはポジション別に練習内容についての情報提供があります。その頃はまだエディーさんの日本ラグビーに対する理解も乏しく、あまりの情報量の多さに閉口する選手も少なくありませんでした。
そこで、練習前にキーポイントの確認をバディーで行い、練習終了後は、それぞれが戦術やメンタル、フィジカルについてのコメントをWebのクラウド上にアップする作業をしました。
特に、「今日できたこと」と「明日、修正したいこと」に分けて、コメントを作成しました。私たちはつい反省ばかりしがちですが、なるべく「できたこと」を確認しながら自信を向上させることや、明日の練習への目的を明確にして健康的なモチベーションを保つことを重要視したのです。
このような取り組みは、コミュニケーションスキルの向上だけでなく、目標設定・達成のスキル向上にもつながります。また、その日の練習でできたことを確認するため、「自分はきっとできる」という自己効力感の向上にもつながります。
入れ替わりの激しいチームだったこともあり、バディーシステムは最後まで有効な手段の一つとなり、少しずつ形を変えながらも最後まで機能したのです。