これらを意識して働きかけ、リーチ選手だけでなく、気づいたリーダーがあえて外国人が集まっているテーブルに入って食事をするなどしていました。
すると、彼らの日本語が上達すると同時に、日本人の英語力もアップ。言葉がパーフェクトでなくても互いを理解しようとする感覚が生まれたため、情報や感情の共有がうまくできるようになりました。
そのうえで、当時の廣瀬キャプテンが決めた目標はこれでした。
「個人を尊重して、失敗してもプレーを認めるような発言や行動を心がける」
廣瀬選手は中、高、大学、所属チームと、常にキャプテンという役割を経験してきており、リーダー経験が豊富でした。決して特別なオーラやカリスマ性があるようなタイプではありませんが、人の入れ替わりが激しいチームで、新たに加入した選手について常に興味を持ち、その都度の接し方を考えながら、丁寧にリーダーシップを発揮したのです。
沈黙が続くウエイトトレーニングも楽しい時間にした
1年目に課題として挙げたポイントのうち「コミュニケーション力」や「フィードバックとコメントの受け止め方」については、より具体的に取り組んでいく必要があることをリーダーズも私も感じていました。
そこで2年目の春、最初に取り組んだのが、筋力や持久力などのストレングス(ウエイトトレーニング)のセッションを利用したコミュニケーション力の強化でした。
通常練習で「コミュニケーションの向上を」と言ってもなかなかうまくいきませんが、ストレングスのセッションはグラウンドでの練習と比べ、瞬時の判断をする機会が少ないのでコミュニケーションの場として適しています。
ストレングスについては、もともと気になっていることがありました。選手たちから前向きなエネルギーを感じることができないということです。
会話は最小限で、与えられたメニューを皆、一人で黙々とこなしています。声なく、お互いをサポートするような動きもありません。本当にラグビー選手が集まってウエイトトレーニングをしているのかと思うほど、静かで単調な空間でした。
実は、筋肉を鍛えるときは回数をカウントするとか、鍛えている筋肉を触ってもらって意識するなどすると、その効果はアップするそうです。もっと楽しくエネルギーのある空間に変えていく必要があると感じていました。
そこで、当時ストレングスコーチを務めていた村上貴弘さんに協力してもらい、以下のことを心がけました。
・必ずスポット(補助)をつけながら、カウントをする
・今、体のどの部分を鍛えているのかを確認する