大学生の「よく行く街」が、渋谷から原宿に移った
「時代の変化が激しい」とはよく言われるが、ここ数年のアパレル業界は本当にそうだ。
例えば、セシルマクビーが苦戦する原因のひとつとなった外資系ファストファッションでは、一時は流行の波に乗った「フォーエバー21」が2019年10月末で日本から撤退した。国内勢では、勝ち組といわれた「ファッションセンターしまむら」の業績も伸び悩む。
まもなく新しい年を迎えるが、以前は長い行列が話題だった「ファッションブランドの福袋」も、近年は落ち着いた。購入した消費者も、SNSで中身のアイテムの交換情報を発信する時代だ。セシルも別のやり方での“福袋販売”を企画しているという。
青山学院大学でファッション講座も持つ木村氏は、最近の消費者意識をこう明かす。
「渋谷のギャルはもう絶滅しています。例えば青学の2年生に聞くと、よく買うブランドは『GU』で、よく行く街は渋谷ではなく原宿。街を歩き、気に入ったものがあれば買う——という消費をする人が多い。そんな時代性を見据えながら、若い女性のブランドとして再訴求していきます」
“決めすぎない”トレンドにどう対応するか
1990年代後半からセシルマクビーに注目し、これまでも関連記事を寄稿してきた筆者は、ファッションにおける消費者心理を「がんばらない時代」だと感じている。世代や所得、興味・関心で差があるが、総じて「主張しすぎず、多額のおカネをかけない」という意味だ。
2012年には、お台場(ダイバーシティ東京プラザ)やスカイツリー(東京スカイツリータウンソラマチ)開業時も取材したが、今回の渋谷は、当時ほどの熱気はなかった。
かつてのセシルは低価格競争に巻き込まれない3つの施策をとった。(1)「こだわり」、(2)「プラスワン」、(3)「オマケ」だ。
それぞれ簡単な例で説明すると、(1)はジャケットやコートなら裏地にこだわる。(2)はワンピースやニットにベルトをつける。(3)はノベルティや先着○人に小物プレゼント、など。
現在は、実店舗以外にネットでの購入や交換も増え、低価格化も進んだ。一方、まだ所有アイテムの少ない若い世代は、手持ち資金の範囲でファッションに投資し、楽しみたい気持ちは根強い。
マーケティングの視点では、前者が「流行」(時代とともに変わるもの)、後者が「不易」(変わらないもの)だ。セシルマクビーブランドの不易・流行は何だろうか。