情報活用とイノベーション追求も容易に

第3にデジタル技術は情報に関する考え方にも影響を与えています。従来、情報は、入手することにお金がかかり、保管することが難しく、また縦割りの組織の中で使われるだけのものでした。しかし、現在、情報は企業内だけではなく、すべての人によって前例のないスピードで生み出されています。

さらにクラウドなどの情報保管のためのシステムは、ますます安価になっており、入手しやすくまた使いやすくなっています。こうして膨大に蓄積されたデータの活用方法が、「ビッグデータ」というキーワードで話題になっているわけですね。

第4にデジタル技術によって、事業がイノベーションを追求する方法も変化しています。従来、イノベーションのための研究・開発にはお金がかかり、それが成功するかどうかについては、イチかバチか的な感じでした。新しいアイデアを検証することは困難であったため、何を製品に組み込むかという決定は経営幹部にゆだねがちで、彼らが決めた内容(えてして極めて保守的なものになりがち)を導入していました。

しかし、今日はデジタル技術によって、以前では考えられないほどの低価格でプロトタイプ作ることが可能になっており、新しいアイデアは迅速にテストすることができるようになりました。これにより、イノベーションのスピードはますます速くなるでしょう。

「モノ」として以上の価値もプラスできる

笠原英一『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』(KADOKAWA)

最後に、デジタル技術は、顧客価値の創造に関しても異なる視点で考える力を与えてくれます。何か製品を提供しようと思った場合に、その物自体だけでの提供には限界があります。企業はその製品によって顧客が実現したいと思っていることを考え、ハードとしての製品に加えソフトウエアやサービスなども全部込みで製品をデザインしていくことが求められており、そのためにもデジタル技術は必要不可欠になりつつあります。

「今までのやり方で上手くいっているし……」「うちには優秀なエンジニアも居ないからできないよ……」とこれまでのやり方をつらぬくか、DXを産業革命ととらえて、新しい時代に進んでいけるか。今、企業は決断を迫られている時であり、その選択によって未来の明暗は大きく分かれるかもしれません。

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