デジタルが変化させる5つの戦略領域
デジタルが経営に与えるインパクトは、蒸気機関からモーターにシフトすることで生産現場に与えたインパクトよりも、一層大きいものになる可能性があります。なぜならば、デジタルは、生産業務だけに限定されず、企業経営のすべての領域における制約を根本から変質させるものであるためです。
『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』では、デジタルによって大きく変わる5つの戦略領域について言及しています。ここでもその内容についてご紹介いたしましょう。
まず第1に、デジタル技術は、顧客との関係を変化させました。これまでは、企業がテレビや雑誌などへ一方的に広告メッセージを流し、大量の製品を顧客向けに出荷するという時代でした。しかし、今日は売り手と買い手の関係は、より双方向的なものになっています。顧客からのメッセージやレビューは、時に広告や有名人の推奨よりも大きな影響力を有しており、顧客の参加がマーケティングの成功において欠かせないものとなっています。
デジタル技術により競合他社との協働も
第2にデジタル技術は、競争に関する考え方についても変更を迫っています。プラットフォームを通じて事業に必要な資産や技術を外部から調達することは以前より容易になり、業界内の競争だけではなく、業界外の企業と競争する機会が増え、以前より競争は激しくなっています。
また、ある領域では長年にわたって厳しい競争をしている他社と、別の領域では協働をしている、という関係性の複雑化も進んでいます。弱みを克服するための資源は、自社の組織の中にあるのではなく、緩い関係にあるパートナー企業とのネットワークの中に存在しているかもしれません。自社内で完結することにとらわれず、いかにアウトソーシングの可能性を模索できるかが、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のテーマになっています。