巨大IT企業「GAFA」はなぜここまで広がったのか。マーケティングに詳しい笠原英一氏は、「その姿は19世紀の終わりの電力会社に似ている。電力会社も最初は無料でサービスを提供し、その後課金するという戦略をとった」と指摘する——。

※本稿は、笠原英一『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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石炭から電力へ——これまでの産業革命

最近のIoT、ビッグデータ、AIをベースとするデジタル技術による革新は、産業革命の歴史でいうと4番目にあたります。

第一次産業革命の動力源は、石炭を燃料とする蒸気機関でした。それまで工場の動力は、川沿いにある水車からすくいあげた水力に依存していましたが、第一次産業革命時に石炭を燃料とする蒸気機関が水力を代替しました。

この蒸気機関は大量生産を可能にしましたが、同時に生産システムに根本的な制約を課すことにもなりました。工場内のすべての装置が、物理的に蒸気機関の駆動軸につながっている構造を必要としたのです。

装置の設置場所や生産性のレベルが動力源によって決められてしまうという制約が、第一次産業革命の特徴でもありました。

19世紀の終わりになると、今度は電力が、それまで工場を規定していた制約条件を取り除く生産革新の原動力になりました。モーターとそのベースとなる電力によって、理想的な設計図のとおりに機械装置類を配置することができるようになったのです。

製造ラインに関しては、すべてを一つのライン軸に合わせるのではなく、いくつもの支流が一つの川につながって流れるように設計することが可能になりました。工場の規模に関しても、ライン軸とベルトの長さによって固定されてしまうという制約を受けることがなくなりました。