「布教者」のおかげでシステムが広まった

制約から解放されることによる生産性の向上という点から、第二次産業革命は画期的であったにもかかわらず、当時の工場経営者の多くがその価値を十分に理解できないでいました。工場従事者の多くが、従来の工場設計の前提にとらわれており、その結果、電力とモーターによって新たに生まれるフレキシブルな生産システムの本質が見えなかったのです。

このような時代に、生産システムの新たな可能性を布教して回ったのが、当時の新興企業としての電力会社です。

電力会社がとった戦略が今でいうところのフリーミアム(Freemium)です。これは、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデルですが、電力会社は、工場の管理者と職工を訓練するために自社の専門技師やエンジニアを無料で派遣し、電気モーターがどのように工場を変革させることができるかということを説明し、実験し、経験してもらったのです。

電力化プロジェクトの進捗は、最初のうちは極めてゆっくりとしたものでしたが、古い体質の工場経営者にも、新しい生産システムの本質が次第に理解されるようになってきました。

こうして1920年代までには、電力を中心に工場、職工、エンジニア、製品、業務などから構成される新しいエコシステムが確立され、第二次産業革命は完成しました。

GAFAは第四次産業革命の布教者

また、第三次産業革命とは、1990年代後半にコンピューターによって生産の自動化・効率化が進んだこと、第四次産業革命とは、近年のIoT、ビッグデータ、AIをといった新しいデジタル技術による革新を指します。

デジタルをベースとして創出された企業、例えば、GAFAなどは、第二次産業革命初期の電力会社のようなものかもしれません。すでにRPA/Robotic Process Automation(AIを備えたロボットによるオペレーションの代行・自動化)で定型業務の改善をはかっている工場や事務センターなどは、第二次産業革命の際に設備を一新して新しい時代に突き進むことを学んだ工場の姿と重ります。

GAFAにしろ、RPA実践企業にしろ、どちらの企業もデジタル技術によって生み出される可能性を理解し、デジタル時代以前に存在していた制約が消滅し、新しい収入源、新たな競争優位の源泉が生まれていること、すなわち今、新しい産業革命が起きていることを理解しているのです。