「自分の趣味」でホテルに泊まることはない

――星野さんはいろいろなホテルへ泊まったりするのは好きですか?

瀧澤信秋『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社)

【星野】いや、ホテルに泊まるというと仕事になってしまいますので。よってあまり自分の趣味でホテルに泊まったりはしないです。

――年間どのぐらい(他の)ホテルに宿泊されているんですか?

【星野】仕事として宿泊することはありますが、多くはありません。試泊、会議、研修などで行くような時ぐらいですね。

――星野リゾートには泊まったりするんですか?

【星野】社内の施設はほとんどないですね。研修で行く時ぐらいですね。

――星野さんが星野リゾートの施設に自分が泊まった時、この料金はどうだろうか? という疑問はありますか?

【星野】出張で行くので料金を払ったことはありませんが、自分の感覚ではあんまり考えたことはないですね。先ほどもお話ししたことですが、やはり料金は、需給関係がまず一つ。もう一つは顧客の期待値と提供しているサービスの価値から設定します。ここのバランスが崩れると、やはり顧客満足度が落ちていきます。

なので、上げられるだけ上げればいいわけではない、と投資家やオーナーへ何度も説明しています。先ほどお話ししたように、中長期的に一番痛い目に遭うのはオーナーであり、投資家なのであって、顧客満足度を維持するということは中長期的に最も大事な指標です。

単価を上げても稼働がついてくる時代になった

――デフレが長く続いてきました。

【星野】だから単価を好き勝手に上げるなんていうことはできませんでした。でも、ここ5年は、単価を上げても稼働がついてくる時代になってきました。需要過多の時代になったということです。昨年くらいから顧客満足度の価格設定を重要な指標に入れていまして、適正な価格、価値に見合った価格を超えてはならないことをスタッフに話しています。

「星のや」でも「界」でもまったく同じです。トマムも最近インバウンドが増加して、放っておくと価格がどんどん上がっていきますが、顧客満足度を見てだいたいわかるんです。ゴールデンウイークなどは高くなるから満足度が落ちますし、価格が下がっている時は満足度が上がります。ゲストはゴールデンウイークと普通の平日で感じる価値というのは変わりません。よって、お客様に満足していただける適正な価格の範囲でいらしていただけるようにするというのはやはり大事なことだと思っています。

瀧澤信秋(たきざわ・のぶあき)
ホテル評論家
コストパフォーマンスの高い国内ホテルを徹底取材、宿泊者目線で評論活動を行う。ホテル業界全般や、サービス、ホスピタリティ、クレーム対応、ホテルグルメなどについて、ホテル経営者やスタッフなどへの綿密な取材の上、各種媒体を通じて情報を発信している。また、旅行作家として、ホテルや旅のエッセイなど多数発表、ファンも多い。著書に『ホテルに騙されるな!』(光文社新書)、『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『最強のホテル100』(イースト・プレス)がある。
(写真=時事通信フォト)
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