正規・非正規 雇用身分による差別は許されない

もちろん経団連の提言に関係なく法改正すればよいのだが、もう一つの難関がある。

これまで同一労働同一賃金原則があるようでなかった日本で何が合理的理由であり、何が合理的理由にならないのかという一定の目安がなければ裁判官も判断に苦しむだけでなく、企業の不安も大きい。

しかも日本は正社員が能力・年齢・勤続年数などで昇給する職能給と呼ばれる属人給が主流であるのに対し、パートなどの非正社員はどんな職種に就くかという職務基準で時給が決まる。そこで法改正の前にガイドラインを2016年末までに作成することにしている。

言うまでもなく焦点となるのは賃金格差の合理性の基準だ。もちろん正規・非正規という雇用身分による差別は許されない。

ヨーロッパの判例では、業務内容・責任の程度などの職務内容、職務の成果、職業経験、学位、資格などの違いによる賃金差は、合理性を満たす要素として認められる傾向がある。

確かに業務内容や職業経験(スキル)、成果が違えば給与が違っても誰もが納得できるだろう。

ただし、同じ業務に従事し、たいした成果の違いがないのに基本給やボーナスが大幅に違うのは合理的とはいえないという判例もある。裁判では貢献度に応じたバランスも問われてくる。

もし、こうしたガイドラインを政府が示し、法改正することになれば企業も非正社員の処遇体系を見直さざるをえなくなるだろう。