鉄道事業を磨くことで「非鉄道」も伸びる

【弘兼】私は日本はもっと観光に力を入れるべきだと考えています。目指すべきは「観光立国」です。外国人観光客に、訪ねたい日本の観光地について聞くと、京都、東京、鎌倉、横浜、大阪の順番だそうです。九州は入っていませんね。九州のアピールには、何が必要でしょうか。

【唐池】外国人の方が日本に来る目的が5つあります。1番が美味しい料理、次が温泉、3番目がショッピング、4番目が自然、そして5番目が日本の文化。外国人に人気の「ゴールデンルート」は、新幹線に乗って富士山を見ながら京都へ。寺巡りをして日本文化に触れて、京料理を食べてから関東に戻る。箱根で温泉に入って東京でショッピング。

【弘兼】このルートには、さきほどあげた都市がすべて入っていますね。

【唐池】しかし九州も、そのすべてが揃っているんです。

【弘兼】確かに。九州の食材は実に美味ですし、各地の温泉も格別です。伝統工芸もすばらしい。「観光立国」のためには、地方の魅力の「見せ方」が重要になりますが、「ななつ星」は、そのお手本になりそうです。

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好調が続くJR九州の業績推移

【唐池】鉄道は成熟産業です。東京の都心部を除けば、これから新たに線路を敷いたり、列車の運行本数を増やしたり、ということは考えられません。当社でも鉄道運輸収入は全体の4割。鉄道以外の事業を伸ばしていく必要があります。

【弘兼】2015年6月に改正JR会社法が国会で成立しました。JR九州は完全民営化され、2016年度の株式上場が目指されています。経営のやり方も変わりますか。

【唐池】上場のメリットは、「いざとなれば政府が助けてくれる」という甘えがなくなることだと思います。

【弘兼】赤字のローカル線を多数抱えていますよね。路線維持の負担は大きいのでは。

【唐池】やはり我々の会社は鉄道なくしてはすべての事業が成り立ちません。大半の事業は駅あるいは線路の近くでやっていますから。ローカル線もきちんと維持して、できれば少しでも発展させて、お客さまを増やす。そのうえで鉄道を取り巻く事業をもっと発展させていく。「ななつ星」はそのひとつです。鉄道を疎かにしてはいけないと思います。