時事通信フォト=写真

JR九州社長 青柳俊彦(あおやぎ・としひこ)
1953年生まれ。東京大卒。77年旧日本国有鉄道(国鉄)入社。JR九州取締役、専務などを経て2014年6月社長就任。


 

「読売1面にJR九州の社長人事が抜かれているぞ! 事実確認して本当なら、さっさと追いかけて記事を出せ!」。5月16日早朝、読売新聞以外のJR九州の担当記者はデスクからの電話でたたき起こされた。「2016年度に株式上場するまで唐池恒二社長が続投のはず」。定説に縛られていた彼らは読売の紙面を確認して、もう一度驚いた。6月末に就任予定の次期社長に、唐池氏と旧国鉄同期入社の青柳俊彦専務の名が挙がっていたからだ。それまで本命視されていたのは買収したドラッグストアの経営を改善し、上場準備も手掛ける本郷譲専務。多くの赤字ローカル線を抱えるJR九州は、これまで流通、不動産など非鉄道事業の拡大で収益を伸ばしてきた。3代続けて鉄道畑以外から社長が出ていたこともあり、長く鉄道部門を歩んできた青柳氏は社長昇格打診に「信じられない思いだった」と打ち明ける。

青柳氏は安全推進部長などを歴任し、鉄道事業本部長を務める鉄道のエキスパートで「彼なしで今の九州の鉄道は語れない」(JR九州関係者)と言わしめるほど。できるだけ部下の話を聞くようにしているが、九州男児の一面があり「あるところで決めたら、かなり強引に実行に向けて進めるところもある」(同)という。

青柳氏が社長に選ばれた背景には、JR北海道での相次ぐ事故や不祥事がある。JR九州の実質的な株主は国であり、「JR北海道のようなことを起こして安全が揺らげば上場どころではなくなる」(国交省関係者)からだ。1987年の旧国鉄の分割・民営化時に国から与えられた約4000億円の経営安定基金は返さずに上場を目指す。「税金を原資に株主に配当できるのか」との批判もあるなか、ダークホースのかじ取りに注目が集まる。

(時事通信フォト=写真)
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