ジヤトコ社長兼CEO 中塚晃章(なかつか・てるあき)
1963年、岡山県生まれ。86年慶應義塾大学商学部卒業後、丸紅入社。マッキンゼー、GEを経て、2014年6月から現職。
欧米では業種を問わず、経営トップが企業を渡り歩くことは珍しくないが「日本でもやっとその動きが出始めた」と話すのは、自動車用オートマチックトランスミッション(自動変速機)の大手部品会社「ジヤトコ」の中塚晃章社長。
年初に前任の社長が筆頭株主の日産自動車の役員に、突如スカウトされた関係で、中塚氏自身も外部から招聘されて新社長に就任したばかりの駆け出しだが、これまで外資系企業を中心に”渡り鳥人生”を歩んできた紛れもない「プロ経営者」だ。
倉敷市の実家は、三菱自動車系の下請け部品の小さな町工場を営んでいたが、「家業を継ぐ必要はない」との父親の理解もあって「幼いころから海外志向が強かった」と中塚氏。
その夢を実現させるため、総合商社の丸紅に入社後は海外留学制度を利用して米ノースウエスタン大学でMBAを取得。丸紅米国のニューヨーク本店駐在を経て、世界有数のコンサルティング会社のマッキンゼーに移籍する。さらに米ゼネラル・エレクトリック(GE)に転職後は航空機エンジン事業で実績を上げ、45歳でGEアビエーションの日本総代表や北アジアなどを統括するトップにも就任した。
ジヤトコの株主は日産75%のほか、三菱自動車工業15%、スズキ10%で構成。現在の海外生産拠点はメキシコ、中国、タイの3カ国で、グループ従業員は約1万3800人を抱える。
中塚社長は就任早々「2020年度までに自動変速機で世界シェア1位目指す」と宣言した。
テニスやジョギングが趣味で「毎年申し込む東京マラソンは2回出場権を得て4時間台で完走した」というスポーツマンだが、ビジネスでは強敵のトヨタ系のアイシンAWを追い抜くためには、新たに複数の自動車メーカーとのタフな交渉が不可欠。若いころから国際舞台で場数を踏んできた「プロ経営者」の腕の見せ所でもある。