読売新聞/AFLO=写真

首相政策秘書官 今井尚哉(いまい・たかや)
1982年、通産省(現経済産業省)入省。今井敬元経団連会長と今井善衛元通産事務次官の2人を叔父にもつ。


 

もともと経済産業省の一役人が今では、安倍首相の側近中の側近。官僚ブレーンとして政治を動かす。政局対応、官邸広報、国会運営、あらゆる分野の戦略を総理の耳元で囁く。決断するのは総理だが、その影響力は計り知れない。

まず、安倍前政権で事務秘書官として官邸に派遣された。元経団連会長と元通産事務次官を叔父にもつ血筋の良さが、世襲政治家である安倍氏を引きつけたのか、すっかり意気投合するが、政権は1年で崩壊。理由の一つは稚拙なメディア戦略。安倍氏は「お友達記者」だけに情報を流す。これを快く思わない多くのメディアが反安倍となって支持率を急落させた。

深く反省した今井氏だが、「再起のチャンスはある」と見た。失脚後も足繁く情報を運び、食事をし、ともに登山して体調の回復を見守った。

政権復帰後、今井氏は政務秘書官に抜擢された。影の大番頭だ。

かつて反安倍だった古手の記者を無視する陰険さも見せるが、今の担当記者たちには、満遍なく小ネタを与える。マスコミの幹部には総理との食事をセッティングし、プライドをくすぐる。効果あってか、反安倍だった社もすっかりおとなしい。一方、首相は休息も十分取り、ゴルフもする。広島土砂災害では一時帰京し、危機管理をアピールする。これらはほとんど今井氏の筋書き通り。

今井主導を安倍主導に見せる腕前は天下一品だ。失敗から学ぶ知恵も素晴らしい。特に民主党議員たちよ、お手本とするがよい。

(読売新聞/AFLO=写真)
【関連記事】
安倍首相の電撃訪朝、衆議院解散のシナリオ
アベノミクス戦略を陰で練ってきたのは誰か
衝撃のデータ「あと10年で自民党員の9割が他界する」
読売との“二人三脚”で安倍政権に怖いものなし
集団的自衛権、安倍流「普通の国」とは、どんな国か