【田原】インキュベーションって何をやるんですか?
【徳重】日本のベンチャー起業家が向こうで事業を立ち上げたり、逆にシリコンバレーのベンチャー企業がアジアに行くときのサポートをしていました。たとえば月水金はAという会社で資金調達や事業開拓をやって、火木土はBという会社で営業をやったり。これを5年半くらいやりました。
【田原】いくつかものになったわけ?
【徳重】その中の一つはM&Aされて、高く売れました。
【田原】いまは少し状況が変わりつつあるけど、日本ではベンチャーが育たないといわれている。アメリカとは、どこが違うのかな。
【徳重】向こうでは頭のいい人ほどクレイジーで、大きなことをぶちあげるんです。一方、日本は頭のいい人ほどロジカルで、大きなことをいわない。だから優秀な人がベンチャーに流れてこない。そこが大きな違いだと思います。
勝算が高いのはITより製造業
【田原】起業のネタとして、電動バイクに目をつけたのはなぜですか?
【徳重】自分の中で「日本の技術を世界でやりたい」という思いがあって、帰国後は暗号や映像のアルゴリズムといった技術をいろいろ調べていました。ただ、これはというものがなかなか見つからない。そうやって3年くらい探し続けていたあるとき、シリコンバレーの友達から「最近、ITをやっていた連中は電気自動車に行っている」という情報を教えてもらいました。自分でも調べてみると、これはすごいイノベーションだと思いまして。
【田原】ITのほうがベンチャー向きじゃないの?
【徳重】これから世界の市場を引っ張っていくのはアジアです。アジアの市場で日本企業が勝てるものといったら、ITより製造業でしょう。なかでもバイクはクルマに比べれば資本がかからず、競合も少ない。日本発のメガベンチャーを目指すなら、これしかないと。