【田原】アジアが魅力的な市場であることは、日本のメーカーもわかっています。でも、実際は苦戦している。日本の製造業は、どこがダメなんだろう。
【徳重】理由は2つあると思います。まず一つは、日本のものを向こうに持っていこうとしていること。日本企業は、日本で売れたものをどうやって新興国向けにローカライズするのかという発想なんです。もう一つは、現地で戦っている日本人が本気でコミットしていないこと。いま1カ月のうち3週間はアジアに行っていますが、本気で市場をつくろうとしている日本人にはほとんど会ったことがない。
【田原】あなたから見て、どのあたりが本気じゃなく見えるの?
【徳重】僕らはベンチャー企業なので、売り上げが立たなければ会社がなくなってしまいます。でも、大企業からきている人に、そういう危機感は薄いですよね。もちろんなかには志の高い人もいるんですよ。でも、せっかく現地組が本気でやっていても、その思いが日本で意思決定する人たちに理解されず、悔しい思いをする。これじゃなかなか本気になれないでしょう。
【田原】徳重さんたちはアジアを見ているけど、日本で売っても儲からない?
【徳重】日本のバイク市場は、ガソリンバイクで30万台。いま電動は1万台もないですが、ぜんぶ切り替わっても30万台ですから、市場としての魅力は薄いかもしれません。
【田原】アジアの市場はどれくらいあるのですか。
【徳重】ガソリンバイクでいうと、ベトナムで300万台、インドネシアで700万台、インドで1000万。アジア全体では年間約5000万台です。
【田原】問題は、それが電気に切り替わるのかということですよね。そのあたりはどうですか。
【徳重】中国は2005年から、電気二輪のほうがガソリンバイクより多くなっています。その波が他のアジアの国にも広がっていくのは遠い先の話ではないと考えています。