【慎】1年後には始めたいです。そのころには50億から100億円は集めておきたいです。ひとまず50億円あれば、1つの国のマイクロファイナンスを変えることは可能です。ただ、1つの国だけでは足りないし、マイクロファイナンス機関の経営をしていくためにはお金だけでなく人材が必要になります。お金も人も、これからもっと集めていかないと。

【田原】稲盛和夫さんや孫正義さんに話をしてみたらどうだろう?

【慎】かつて松下幸之助さんは「あなたが買ってくれたら将来の横綱が育つ。何とか応援するつもりで買ってください」と電球を売り歩いたそうです。私も、「将来の世銀ができるので、これを応援してください」といって資産家や財界のみなさんを口説こうかと。

【田原】スケールの大きな話だけど、だからこそ面白い。実現できるように応援しています。

田原総一朗が見た慎泰俊の素顔

「慎さんは精神力がすごい。通っていた高校には上級生が下級生からお金を巻き上げる伝統があり、彼は上級生になってからそれをやめさせようとした。最初は相手にされなかったが、半年かけて粘り強く説得し続けて、とうとうやめさせた。普通はそこまでやろうと思わないし、やってもできない。このエピソードを聞いて、彼が発する強いエネルギーを感じた。

大学卒業後は金融業界に入ってM&Aのプロになった。しかし、お金を儲けて贅沢をするという方向には走らず、児童養護施設の支援をするなどソーシャルビジネスをやっている。巨万の富を得られる力を持ちながら、それを社会のために使うというのは、いまの若い世代を象徴する働き方の1つだと思う。慎さんは日本の可能性でもある。彼が持ち前のエネルギーを発揮して、この国を大きく変えるところを見てみたい」

リビング・イン・ピース 代表理事 慎 泰俊
1981年、東京都生まれ。朝鮮大学校政治経済学部卒業。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。2006年よりモルガン・スタンレー・キャピタルに勤務。07年10月よりNPO法人「Living in Peace」の代表理事。『未来が変わる働き方』『働きながら、社会を変える。』『ソーシャルファイナンス革命』など著書多数。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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