定年後の60~74歳までの15年間は、元気で好きなことができる「人生の黄金期間」。このときに無為に時間を過ごすのではなく、充実した第2の人生を送るにはどうすればいいのか。ベストセラー『定年後』の著者・楠木新さんなど3人に聞いた――。

定年後も生き生きしている人は全体の2割程度

長い宮仕えを終え、やっと手に入れた自由。これからはのんびり好きなことをして過ごすぞと喜んだが……。

写真=iStock.com/Yuri_Arcurs

「定年後は確かに解放感があります。特に最初の1カ月は解放感に満たされます。ただ、それがピークで、半年もすれば現役時代との落差を痛感し始める。忙しく、人間関係がわずらわしくても、会社生活はそれなりによかったなと。定年後も生き生きしている人は全体の2割程度でしょうか」

こう語るのはベストセラー『定年後』の著者、楠木新さんで、大勢の定年退職者を取材したなかでの実感だそうだ。

定年6カ月後は雇用保険が切れる時期で、仕事を探し始める人も多いが、現実は厳しい。いままでのキャリアを生かせる仕事に就けるのは一握り。警備員など現場での仕事は需要が多いものの、体力に不安があるし、プライドも邪魔する。では、地域でのボランティアはどうか。「地域とのつながりがほとんどなかったオジサンがいきなりコミュニティーに参加するのは難しいでしょう」(楠木さん)。

しかたなく図書館や喫茶店で時間をつぶしたり、家でテレビを見てダラダラ過ごすことに。それが妻の負担となり、別名「主人在宅ストレス症候群」という心身症まで生まれている。

楠木さんは、定年後の60~74歳の15年間を「人生の黄金期間」と呼ぶ。1日の自由時間は11時間で、トータル6万時間もある。「この膨大な時間を有意義に使うかどうかが人生後半戦の大事なポイントになります」(楠木さん)。

とはいえ、前述のように再就職やボランティアはハードルが高い。そこで選択肢のひとつとなるのが、自分に適した自営や起業だ。「ボランティアに比べ、お金を稼いでいる人のほうが生き生きしています。より大きな義務や責任が伴うからでしょう」(楠木さん)。

自営や起業のためには助走期間が大切で、「できれば50代前半から準備したほうがよいでしょう」と楠木さんは助言する。楠木さん自身も、50歳から仕事と並行して執筆に取り組んできた。