日本には起業の成功者を「成金」とさげすむ風潮がある。そうした文化は経済の成長性を損ねている恐れがありそうだ。米シリコンバレー発のベンチャー支援企業プラグ&プレイ(Plug and Play)は、今年日本法人を立ち上げた。日本法人のフィリップ・誠慈・ヴィンセント社長は「起業家のイメージを変えたい」という。世界から日本のベンチャー市場はどうみえるのか――。

日本のベンチャー業界にはポテンシャルがある

――プラグ&プレイはどのようなビジネスモデルなのか。

我々は、基本的には投資のリターンで利益を出すテクノロジーアクセラレータ兼投資家だ。世界10カ国に拠点を持ち、毎年約150社に出資している。その中にはDropboxやPayPalも含まれる。より効率的で低リスクな投資をするために、アクセラレータープログラムやインキュベーション、ビジネスマッチングを行うことで、ひとつのエコシステムを作り、その中で投資をするスタイルを取っている。

Plug and Play Japanのフィリップ・誠慈・ヴィンセント社長

私が代表を務める日本法人の第一のミッションは、投資で利益を得られるようにするため、日本のベンチャー業界を活性化するエコシステムを作ることだ。日本のベンチャー業界は世界的には遅れているが、非常にポテンシャルがあるマーケットだ。

具体的には、世界的に成功しているベンチャー企業を日本に連れてくると同時に、日本のベンチャー企業を世界に発信したい。日本の大企業には海外のベンチャーと協業したいという意欲があるため、マッチングは難しくないだろう。また、日本は「技術がすごい国」というイメージを持たれている。だが、技術をビジネスに変えられる人が少なく、発信ができていないのが現状だ。日本のベンチャー企業とその技術が世界で戦えるようにする方法を探りたい。プラグ&プレイの日本法人がハブとなり、グローバルなベンチャー企業と日本国内のベンチャー企業が集まる場所を作りたいと考えている。

日本法人の立ち上げにあたり、大手企業7社とのグローバルアクセラレータープログラム「Batch 0」の実施を発表した。今年11月には、東急不動産とコワーキングスペースをオープンする予定だ。

ベンチャー支援が「バラバラ」の日本

――プラグ&プレイが関わり、大企業を中心にベンチャー育成に成功している国はあるか。

ドイツのシュトゥットガルトでは、メルセデス・ベンツ・カーズと一緒にモビリティをテーマとしたアクセラレーションプログラム「スタートアップ アウトバーン」を行なっており、ヨーロッパではかなり大きなイノベーションプラットフォームと言われている。メルセデス・ベンツ・カーズが会社の戦略として、ベンチャー企業のインキュベーションを行う必要があると認識し、実行したのである。

このプログラムは、プラグ&プレイが得意とする、複数の企業とエコシステムを作ってイノベーションを起こす「コーポレートコンソーシアムモデル」の形だ。そのため、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ/DXCテクノロジーやポルシェをはじめ、複数社が参加している。