2007年、Living in Peaceの前身となる勉強会を始める。

【田原】普通の家庭で育った子どもとそうでない子どもは、そんなに違うの?

【慎】私たちが子どもを見て、「かわいいな、何かしてあげたいな」と思うことがありますよね。私たちがそう感じるのは、子どもたちが家庭生活を通して、大人から愛情を受けるための能力を身につけてきたからです。ところが親から虐待を受けて育った子どもは、その能力が壊されたり歪な形で成長したりしてしまう場合があります。その結果、何も話しかけてこなかったり、一緒にいてもつまらなさそうにしていたりして、かわいげのない子どもになってしまうことがあります。また、全く正反対に、大人に対してかなりべったりとくっついていようという子どももいる。何にせよ、人との距離感がうまくつかめていないのです。

【田原】そうなると、人とのコミュニケーションでも苦労しそうだ。

【慎】学校でも友達とうまく関係をつくれないからいじめにあったり、先生からも公平に扱われなかったりします。もちろん子どもたちはなぜ自分がそんな目にあうのかわからなくて悩んでいる。これは相当にキツい。

【田原】大きなハンデだ。努力で乗り越えられるレベルでもなさそうですね。

【慎】努力は根底に自分を愛せる心がないとできないと思います。ところが施設の子どもたちは人から大事にされた経験が少なく、自分を愛することも難しい。だから努力が苦手で、5人のうち1人が高校を中退するという現実があります。中退して施設を出ても頼るところがないから、風俗で働く女の子や、麻薬を売ったり暴力団に入ったりしてしまう男の子も後を絶ちません。