フューチャーセンターは、北欧の知的資本経営から生まれた、「未来の価値を生み出すセンター」です。その後、欧州内の公的機関に広がり、複雑な問題をスピーディに解決するために、多様な専門家やステークホルダーを集め、オープンに対話する場として発展しました。日本では、人口減少・市場縮小の閉塞感を乗り越えるための、企業や大学のオープン・イノベーションの場として、また未来に向けた市民参加の街づくりの場として、期待が集まっています。
野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa

フューチャーセンターは、2011年になって広く認知され始めました。フューチャーセンターの本質を理解するには、フューチャーセンター・セッションを体験することが一番なのですが、何を見ればよいのだろうか? 本質はどういったところなのだろうか? という声を多く聞くようになりました。

フューチャーセンターは、「対話のための専用空間」でもあり、「人と人のつながり」でもあり、「企業や社会の変革装置」でもあります。フューチャーセンターで行われる活動は、私たちが「人として」社会や市場経済と向き合い、協力し合って変化を起こしていくための、本質的な対話と協調です。このことを深く理解し、一方でそれぞれの企業や地域の文脈に翻訳し、きわめて目に見える形で具体化していったものがフューチャーセンターになります。ですから、組織やコミュニティの数だけ、異なるフューチャーセンターが立ち上がる可能性を持っているのです。

フューチャーセンターの思想と「場の主宰者としてのあり方」を理解し、その具体化のための「対話とイノベーションの方法論」をぜひ体得・実践していっていただきたいと思います。そのような志を持ったフューチャーセンター・ディレクターが増えていくことが、私たちの未来をワクワクしたものに変えてくれると信じています。