何か新しい概念を理解しようとするとき、人は必ず「○○みたいなもの」といったように他の似たものと関連づけて理解しようとします。
野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa

フューチャーセンターは、企業がお金をかけて作るショールームみたいなものですか?

フューチャーセンターは、デザインに凝った研修所みたいなものですか?

フューチャーセンターは、ホワイトボードに囲まれた会議室みたいなものですか?

フューチャーセンターに一番近いのは、雰囲気の良いカフェでしょうか?

今こうして対話をしている場こそが、フューチャーセンターなのですよね?

このような、様々な質問を受けることがあります。どの質問に対しても、「そういう見方もできますが、少し違います」と答えるしかありません。

この複雑さ、理解しにくさは、「フューチャーセンター」がたんなる施設の名前でもなく、ただの「活動」でもないからです。

たとえば「学校」は、施設の名前ではありません。施設の名前は「校舎」ですよね。教育の目的を掲げ、たいていは校舎を持ち、先生がいて、生徒が通ってきて、授業や課外活動といったプログラムを運営しています。教育プログラム提供という機能を持ち、学習という活動が行われているのが、概念としての「学校」です。

フューチャーセンターも、それと同じように捉えてください。創造的なワークショップのファシリテーションという「機能」を提供し、そこで対話やアイディア創出という「活動」を行っているのが、概念としての「フューチャーセンター」です。

それともう一つ理解を難しくしていることは、「フューチャーセンター」という名前です。なぜ、「フューチャー」なのでしょうか。

私は、これらの答えを急ぎたくはありません。それは、「要するに、○○みたいなものですから」という説明をしてしまうことをどうしても避けたいからです。ここでは「問い」を投げかけたまま、少し考えていただく時間をとれればと思います。

創造的なワークショップのファシリテーションという機能を提供し、そこで対話やアイディア創出という活動を行っている場が、なぜ「フューチャーセンター」と呼ばれるのでしょうか?

このことは、「創造的(クリエイティブ)」「対話(ダイアローグ)」の意味を深く考えることにもなると思います。