フューチャーセンターのもたらす価値

――最後に、フューチャーセンターの組織にもたらす価値を教えていただけますか?

飲料メーカー コーポレートブランド責任者 Aさん私の仕事で言えば、経営理念が魅力的だと感じられていないのに、それを無理に浸透させるというような、意味のない活動になりやすいところがあります。最近、フューチャーセンターで他社のデザイナーと話していて、大きな気づきがありました。経営理念は、一社で実現するには大きすぎるんです。いろいろな企業と一緒にやることで、インパクトはもっと大きなものに成り得る、ということです。拡大されたネットワークで経営理念の実現をめざせば、社外に開かれたフューチャーセンターが市場を創造することにもつながるのだと思いました。

認知症関連NPO 理事 BさんNPO側から社会を見ると、たくさんの課題が見えます。行政と企業には、それぞれの担当領域があって、あとの部分はNPO任せ、という感じがします。ですが、NPOも業界毎に『この問題は大事!』と言って助成金を奪い合っているのが現状です。このような縦割り状況をフューチャーセンターで突破したいのです。医療の人が集まって認知症のシンポジウムをやっても、いつも結論は似たり寄ったりです。でも、そこに企業の人たちが入って一緒に議論すると、新しいキーワードが出てきます。第三極の人が入るのがいいんです。

ITサービス企業 R&D企画 Fさんこれからの時代は、自社で課題を創造できないとダメだと思います。価値のピラミッドを描いたとすると、一番下の層が「言われたとおりにシステムを作る」レベル、真ん中が「どうやって解くかをコンサル/ソリューションする」レベル、そして最上流が、「新たな課題を設定する」レベルになります。うちの会社には、この最上流の「意志を議論する場」、この社会に何が必要なのかを決める力が圧倒的に必要になるはずです。それがフューチャーセンターです。

空間デザイン会社 マーケッター Nさん複雑な問題を解くのに、対話をするというのは遠回りのように見えるのですが、フューチャーセンター・セッションは、それをギュッと凝縮して行うところが面白いんです。『このプロセスを空間で表現できるのでは?』と思い、一緒に取り組み始めました。フューチャーセンターには運営メソッドがあり、ただのカフェとは違います。しっかりした運営メソッドがあれば、いつの間にか会議室になってしまった、などということも起きないはずです。

皆さんのフューチャーセンターとの出会いは、企業も社会も縦割りで目先の問題にかかりっきりになっていることへの解決策、だったわけですね。そしてフューチャーセンターに集まる魅力的な人との対話に、何かいつもとは違うマジックを感じられた。そして、その実践を通じて、企業も社会も大きな価値を実現する有機体へと変化を遂げていくであろう、一筋の光が見え始めている。そんな状況が、業界やセクターを超えて同時に起こっていることを感じることができました。ありがとうございました。