節約しているのに、お金が貯まらない人がいる。それはなぜか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「小さな節約には敏感でも、大局的なところでお金を減らしている人がいる。素直すぎるのは危険だ」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

通帳を見ながら頭を抱える女性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです
加藤さん(仮名/32歳)のケース
会社員(年収400万円)
住まい 賃貸マンション(6万5000万円)
貯金額 300万円

10年間節約生活を続けているのに貯金は300万円

毎日お弁当を作って、マイ水筒を持参。洋服はファストファッションブランドで済ませ、クーポンのチェックも欠かさない……。お金に気を使っている方は多いですが、中には、どんなに頑張って節約しても一向にお金が増えない方が存在します。

今回は、“節約家”が陥った「ある罠」についてお伝えします。

大手メーカーの事務職・加藤晴美さん(仮名/32歳)は、自他ともに認める倹約家。買い物に行くと、棚にあるお目当ての商品を必ずスマホで検索し、店頭での価格が一番安いことを確認してからでないとレジに行きません。フリマアプリや電子クーポンもフル活用し、スーパーでは見切り品から献立を組み立てると言います。本はここ10年、図書館で借りたものだけ。ポイント交換サイトで日々、溜まったポイントを最大化する努力も惜しみません。先日も、靴とノベルティグッズがフリマアプリで売れたらしく、「2万円ゲットしました!」と嬉しそうに見せてくれました。

就職してから10年、こんな調子で節約を頑張っている……のですが、加藤さんの貯金は現金の100万円と、投資信託に預けている200万円。400万円の年収と彼女の頑張りからすると物足りない気がしたのでヒアリングをしてみると、その謎がとけてきたのです。

窓口の銀行員に言われるがまま契約してしまった

実は加藤さん、外貨預金と投資信託がセットになった商品と、新興国への株式投資信託に総額約400万円を投資していました。しかし、投資した時期が悪く、半分以上値下がりしてしまったのです。どちらも、貯蓄がまとまった金額になったタイミングで買っており、外貨預金のセット商品については、大手銀行の窓口で「今だけ金利3%つけちゃいます」とおすすめされたと言います。

加藤さんはまずここで、3つの間違いをしました。

ひとつめは、大手銀行の外貨預金は為替手数料が高く、いい商品とは言えないこと。また、投資信託も手数料が高い商品で投資先もとても中長期的に安定的にお金を増やしていけるような投資先ではありませんでした。

2つめは、「今だけ金利3%」の罠。一見、お得に思えますが、3%の金利がずっと適用されるわけでなく、「最初の1カ月だけ」3%の商品だったのです。これはどういうことかというと、例えば、1万米ドル預けた場合、受け取れる利息は、「1万米ドル×3%=300米ドル(税引前)」ではないということです。この3%という金利は年利率のことですが、3%の金利が適用になるのは1カ月だけですから、実際に受け取れる利息は「1万米ドル×3%×12分の1=25ドル(税引前)」となります。1カ月を過ぎると、低い金利が適用になります。つまり、まったくおいしくないキャンペーンに乗ってしまっていました。

そして最後は、窓口の銀行員に言われるがまま契約を決めてしまったこと。加藤さんの節約ぶりが貯金額となって現れない理由は、この「素直さ」にあったのです。