徹底した顧客主義を貫くために、これまでのやり方を変えなければいけないときもあるでしょう。慣れ親しんだ手法を変えるとき、社員たちから反対の声が挙がることは必然です。そのような状況のなかで、リーダーがとるべき姿勢とはどのようなものなのか。「顧客目線」を貫くアサヒビールの松山社長に教えてもらいます。(2023年8月28日レター)

顧客主義をチームや組織に浸透させられるかどうかはリーダーにかかっています。前々回、「アサヒ生ビール」(通称マルエフ)や「スーパードライ生ジョッキ缶」に社内から反対の声があがったことを紹介しました。どちらも味や品質にこだわりがある社員からでした。私はコンセプトムービーやお客様が試作品を飲む様子を撮影したムービーを見せて、お客様が求めているものを理解してもらおうと努めました。それも効果があったと思いますが、どちらも最後は当時社長だった塩澤が「やる」と言ってくれたことで流れができた。良かれ悪しかれ、リーダーが決断すれば、組織はそれに沿って動くのです。

もっともいけないのは、リーダーがブレることです。たとえばいつもは「お客様を第一に考えろ」と言っているのに、いざ業績が厳しくなると、手のひらを返したように「お客様に多少無理を聞いてもらってでも、とにかく数字をつくれ」という。これでは普段どれだけ素晴らしいことを言っていても台無し。社員は「顧客主義はその程度の軽いもの」と受け止めて、本気で実践しようとはしないでしょう。

(構成=村上敬)