小さなチームにおいては、個々人が取り組んだチャレンジが成果に大きく影響します。どのくらいチームメイトを自由に行動させるか、についてはリーダーの悩みどころでもあります。「黒霧島」で業界ナンバー1にのぼりつめた霧島酒造・江夏順行社長のマネジメント術を公開します。(2023年7月31日レター)

霧島酒造の「考動指針」にある「会社の主役は“私”です」には、人生の主人公は自分であり、より良い人生を生きるために会社という場を利用してほしいという思いを込めています。一人ひとりが当事者意識を持つことは、会社にとってもメリットが大きい。小さな組織は、一人がカバーすべき業務領域が広くなりがちです。そのときにいちいち上司にお伺いを立てていたら仕事になりません。現場で社員一人ひとりが仕事を自分事としてとらえて自律的に動くからこそ、組織が機能します。

我が社の社員は指示待ち型ではないので、積極的に新しい提案もしてくれます。たとえばフルーティーな味わいが人気の「茜霧島」は、オレンジ色が特長のさつまいも「玉茜(タマアカネ)」に目をつけた女性社員の提案でした。玉茜は仕込みが難しく、試作は何回も失敗しました。しかし酵母を改良して繰り返し挑戦。商品として売り出せるまでに9年かかりました。長い道のりでしたが、途中で諦めなかったのは自ら提案した企画だったからでしょう。

(構成=村上敬)