独自のものの見方をするには何をすればいいか。SF作家でコンサルタントの樋口恭介さんは「自分の中になかった知見を得る『異質な経験』は、家の中でも工夫次第で積み重ねることができる。例えば、身の回りにあえて『異物』を置いてみることはおすすめだ。2023年の『M-1グランプリ』で、漫才コンビの真空ジェシカが繰り出したつかみがヒントになる」という――。

※本稿は、樋口恭介『反逆の仕事論 AI時代を生き抜くための“はみ出す力”の鍛え方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

AIと人間が操作する運用システムを比較するビジネスマン
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自分なりの世界観やものの見方の育み方

プラスになる経験を積むために大事なのは「自分にとって異分野」であることです。世の中から見てどうこうというよりも、自分から見て異質であること、初めてやってみることであることのほうがずっと重要だと言えます。

もしあなたにそれなりの登山経験があり、一方海にはまったく入ったことがないと仮定すると、海外の名のある山への登山を敢行するよりも、国内で手軽な海水浴場に繰り出したほうがよっぽど意義深い経験になる可能性もあるのです。

そうした視点で「異分野の経験」を日々積み重ねていれば、脳内にある経験のストックが増え、ものの見方が変わっていくことでしょう。

そうした経験のうち、最も身近で手堅い例は、

「これまで足を運んだことのない土地に赴くこと」

かと思います。風景が変わる様子を眺めながら時間をかけて移動し、初めて通る道を歩き、その土地の喧噪や匂いを感じ、食べたことがない食事を味わう。そういった体験のことですね。

そんな「自分の中になかった知見を得る経験」を重ねることで、自分なりの世界観やものの見方を育んでいきましょう。そうすることで、内面に少しずつアイデアの種が蓄積します。

ぼんやり散歩をしているときや、無心で風呂に入っているときなどに、ふと以前目にしたものや経験したことの感覚や印象がよみがえり、それが自分のやりたいこととうまくリンクする――。

不思議なもので、アイデアというものはそんなふうにして唐突に形を成すことが多々あります。