一流の人は不測の事態にどう対応するか。元JALのCAで研修コンサルタントの香山万由理さんは「あるフライトで空調の一部が故障する事態があり、温度調節がうまくいかずにCAが罵倒され続けることがあった。そんな心身ともにドロドロに疲れていた私たちCAに、あるお客さまがかけてくれた言葉に本当の一流の姿を見た」という――。

※本稿は、香山万由理『仕事ができる人は、「人」のどこを見ているのか』(光文社)の一部を再編集したものです。

飛行機キャビン
写真=iStock.com/EllenMoran
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相手がミスしたときは、「自分の説明不足」を疑う

仕事ができる人は、「不測の事態の対応」を見ている

以前、仕事の待ち合わせでKさんという方から「ヒルズの入り口に13時集合」というメールが届きました。私はなんの疑いもなく「六本木ヒルズ」だと思い、六本木に向かいました。

しかし現地に着くと、誰もいません。もしかして間違えた?と思い、慌ててKさんに電話をしました。すると……。

「六本木ヒルズ? 表参道ヒルズって言いましたよね? なに間違えているんですか? ちゃんとメール見てくださいよ!」

メールを再確認すると、やはり「ヒルズの入り口に13時集合」とだけ書いてあり、どこのヒルズかの記載はありませんでした。もちろん、どこのヒルズかを確認しなかった私のミスです。猛省しながら、大急ぎで表参道に向かいました。

表参道ヒルズに到着すると、Kさんと同じ会社のTさんが迎えに来てくださいました。

Tさんは穏やかな表情で、「申し訳ございません。私どもの説明がわかりにくかったですよね。ヒルズ、とだけお伝えしたら、六本木をすぐに思い浮かべてしまいますよね。かえってお手間をおかけすることになってしまい、本当に申し訳ございません。ひと息ついてくださいね」とおっしゃったのです。

私はこのTさんの言葉にホッとすると同時に、そのお人柄の素晴らしさに心打たれました。

確認をしなかった私が言うのも何ですが、誰にでもミスや勘違いはあります。そんなときに、責め心いっぱいで相手の非難に終始するのか、自分の説明が至らなかったからと相手の非には触れないでおくのか、人間の器の差によって大きな違いが表れます。